10/14(祝月)『少女都市』本読みWS 第5回(最終回)

2024年10月14日 Posted in 中野WS『少女都市』
71GnisYUW9L._SL1500_.jpg
↑来週からは『少女都市からの呼び声』との比較が始まります
この文庫のおかげでずいぶんアクセスし易くなりました


昨晩は『少女都市』本読みの最終回でした。
今日のそのレポートです。

3幕。雪子のガラス化手術が進むフランケの研究室でやり取りの
続きから再開しました。自分がガラスになっていくことに希望を
感じつつ、不安を覚える雪子。そこへ連隊長に化けた兄がやってきて
フランけを追い払います。

兄に説得されると雪子はもとの世界で生きることに惹かれ、
兄に付き従おうとします。ですが、もともとが障害を持ち、
フランケによるガラス化手術を受けた状態の自分に不安を抱き、
失われた三本指を求めます。それは、まさに雪子にとって
「肉体」の象徴なのです。

しかし、いつかの事故で失われた指が復元できるはずもなく、
雪子は兄の指を所望します。お兄さんが指を提供してくれたら、
雪子は現世に踏みとどまることができるのです。

ここで、ダメ男だった兄が一念発起し、文字通り指切りのシーンが
始まります。ヤクザ映画の指づめと、約束の指切りげんまんが
入り混じったような場面ですが、妹と兄の壮絶な結びつきを
示す名シーンです。情けなかった兄が急速に成長していく場面でも
あり、痛々しいやり取りが繰り広げられる一方で、雪子が床を
這う虫の退治に気を取られて兄を放っておくところはコミカルでも
あります。こうして悲喜劇入り混じるところに唐さんの巧さがあります。

2本を切り終え、3本目の小指(約束の指)に差し掛かる時、
フランケ醜態博士がピストルを構えて乗り込んできます。
後ろには街の人々まで引き連れている。

フランけは持ち前の弁舌と武器の威力を駆使して大衆を扇動し
雪子の兄を追い詰めますが、結局はちょっとしたミスからピストルを
奪われ、それが元で雪子の下腹部が撃たれる結末に至ってしまいます。

傷ついた雪子が階段を登りながら、そのスタートからはビー玉が
こぼれ落ちる場面は、ガラスの少女の生理であり、フランケの
オテナの塔作戦が崩れ去ってゆく場面でもあります。
折しも、舞台背面が割れると、フランケがガラスの少女を求める発端と
なった連隊長が上海ママを連れて現れます。連隊長たちも、フランケも、
ともに夢み、すがった世界が崩壊してゆくなかでこの芝居はエンディングを
迎えます。ガラスをテーマにしているだけあって、壮麗な幕引きでした。

来週の日曜からは『少女都市からの呼び声』に入ります。

トラックバックURL:

コメントする

(コメントを表示する際、コメントの承認が必要になることがあります。承認されるまではコメントは表示されません。その時はしばらくお待ちください。)