6/15(月)『愛の乞食』本読みWS 第6回(最終回)

↑おとなしかった「田口」が「朝日生命の海賊」として奮起するシーンです。
とはいえ、すぐに叩きのめされてしまう。(撮影:伏見行介)
昨晩は、6回に渡って読んできた『愛の乞食』の最終回でした。
「尼蔵」「馬田」「大谷」ら、「シルバー」を騙った海賊たちが
獲物の金歯の取り分をめぐって同士討ちする、あの名場面から
再開しました。
初演は1970年。70年安保の果てに内ゲバが激しさを増していく
時代に、この場面は痛切だったはずです。意地汚くて、愚かで、
哀切な人間の本性がむき出しになります。それでいて、かなり
コミカルでもあるところが素晴らしいところです。
戦後に行き場を失った海賊たちが、刑事としての調書、
緑のおばさんとして、子どもたちの靴や定規、弁当箱を
せめてもの獲物として、情けなくも愛着するところ、
そこから一気に殺し合いなだれ込むところは、全編の
白眉といえます。
これをずっと見ていた朝日生命の「田口」に、殆どせりふは
ありません。けれど、見ていることが大事なのです。
この後、目を覚ました「万寿シャゲ」は、「田口」のなかに
「一本足の憲兵」を見出します。「憲兵=シルバー」の妻が
「小春」であり、「田口」の母もまた「小春」であるならば、
「田口」は「シルバー」の忘れ形見であるかも知れません。
「田口」と「憲兵」を一人の役者が演じてきた意味が、
ここで炸裂します。
この後、「警官」が押し寄せて、あっという間に舞台である
公衆便所は片付けられてしまいます。あの海賊たちは何だったのか、
すべてが押し流されていく様子に「田口」はいたたまれず、
「朝日生命の海賊」を名乗って、奮起します。
が、それさえも、あっという間に叩きのめされ、平穏な公衆便所の
日常に回収されてしまいます。時代は海賊の存在を、誰かが英雄で
あるこや、冒険の存在を許さないのです。
静かになった公衆便所に利用者がやってきます。
すると、個室から海のとどろきとともに「シルバー」が現れ、
「万寿シャゲ」を求めて叫びつづけるところで、この劇は幕を閉じます。
ところで、「愛の乞食」とは誰だったでしょうか。
明日は続きとして、この劇の題名の意味を考えます。

