2/7(月)『下谷万年物語』WS 第1回レポート(中野)

2022年2月 7日 Posted in ワークショップ Posted in 唐十郎戯曲を読む『下谷万年町物語』
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↑唐ゼミ☆2010年秋公演『下谷万年町物語』冒頭。伏見行介さん撮影。

昨日から『下谷万年町物語』のワークショップを始めました。
手もとの台本では242ページあるこの物語を、4月末の日曜日まで
全12回かけて読みときます。

初回は、まず作品が書かれた経緯の説明から入りました。
1981年の初演は紅テントでなくPARCO劇場、蜷川幸雄さんの演出により
この台本は上演されました。

そこで、1969-1984年までの唐さんと蜷川さんの経歴、
二人の関わり合いを追いかけるところからスタート。

すでに状況劇場で紅テント興行に着手していた唐さんと、
劇団青俳を飛び出して現代人劇場をつくり演出家デビューした蜷川さん、
二人の共同作業は、1973年『盲導犬』により始まり、
1975年『唐版 滝の白糸』を経て、1981年に至ります。

『唐版 滝の白糸』に登場する「六本指」のモチーフ、
デビュー以来、蜷川さんの得意とする多くの人物を登場させる演出、
『近松心中物語(79)』で活用した舞台前面の大きな池が、
『下谷万年町物語』に活きています。
『近松〜』では舞台のそこかしこに彼岸花が咲いていましたが、
『下谷〜』だと、それがサフランに変わる。

また、1970年初頭から続く唐さんの傑作期が一つの頂点を極めた後、
70年代中盤から試行錯誤に入り、かつ大久保鷹さんや根津甚八さん、
小林薫さんといった主軸が退団する中で、唐さんは80年代初頭に
自分の出自を振り返る作品群を残しました。
『お化け煙突物語』『黄金バット 幻想教師あらわる』『秘密の花園』......
自身の生まれ育った上野〜浅草を舞台にした『下谷万年町物語』は、
一連の端緒となった作品だということも説明しました。

そして、本編へ。

物語は、現在は台東区をあとにした男が、万年町跡地とおぼしき場所を
訪ね、町を回想するシーンから始まります。
そこに、自らの少年時代の分身が現れ、昭和23年に還ろうと言い出す。
タイムスリップの方法が振るっていて、注射器で空気を抜けば、
流れてきた時間もまた空気とともに抜き出され、往時に戻るという。

少年の名は文(ふみ)ちゃん。
果たして、文ちゃんによる注射、空気の吸引によって、
舞台は昭和23年の浅草瓢箪池のほとりに変わり、男は少年に転じます。

つと見ると、池から飛び出た尻3つ。
その穴からはサフランの花が開き、それらは食いつめた3人のオカマ
の哀れな姿と知れます。戦後、万年町に跋扈していたオカマ軍団の
No.2である「お春」は、少年に念を押すかたちで、物語の発端を語ります。

①男娼はびこる戦後の上野の森を警視総監一行が視察に訪れた
②オカマの頭目・お市とお春は彼らに暴行し、総監の帽子を奪った
③帽子を奪われ、権威を失った警察は、オカマたちへの食料配給を止めた
④帽子を返却したくとも、お春のイロの青年・洋一が帽子も持って行方知れず
⑤洋一は、浅草にある劇団「軽喜座」の小道具係で、演出家志望。
⑥文ちゃんと洋一は友人であり、ともに生来の「六本指」を切除した経験を持つ

と、このようにやり取りがなされたところで、
少年・文ちゃんが気がつくと、そこにオカマたちの姿は消え、
浅草瓢箪池に咲くサフランの花が風に揺れるのみ。

以上、主要登場人物や物語の前段が話されたところで、今回を終了。
次回は、洋一が登場して文ちゃんと会話するところから始めます。
2/13(日)18:00-20:00。では、また!

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