3/3(火)『ビニールの城』本読みWS 第4回 その②

2026年3月 3日 Posted in 中野WS『ビニールの城』
昨日の続き。第4回オンライン本読みのレポートです。
「モモ」の夫「夕一」が登場すると、この夫婦の独特な関係、かなり歪んだ関係
が明らかになります。

まず、二人は肉体関係を持っていません。
劇冒頭から「モモ」が背負っていた赤ん坊は人形、つまりダミーです。
さらに、「モモ」が「夕一」と結婚しようと決めたのは、ただ単に「夕一」の名前
によって選択された、ということも分かってきます。

つまり、「朝顔」に去られてしまった「モモ」は、「朝顔」の相棒である
「夕ちゃん」と呼べる男性と結婚することで、いずれ「夕ちゃん」を探す
「朝顔」に対して釣り糸を垂れていた、ということなのです。
しかも、「夕一」は噛ませ犬、踏み台として扱われながら、彼自身はそれを
受け入れて、指一本触れずに夫婦関係を営んできた、ダミーの赤ん坊も
可愛がってきた、という事実が明かされます。

「モモ」の「朝顔」への迫り方は、なかなか恐ろしいですね。
「夕一」のマゾヒズムも、凄い。
しかし読者や観客にとっておもしろいのは、彼らの行動が徹底した
「献身」や「純愛」として受け取れることによります。
これは、ハッキリ言って唐十郎の魔法です。
客観的に見れば、かなり変態的な三角関係なのですが、それを、
胸もときめくピュアなものに感じさせる。演じ手や読み手として大切なのは、
その両方を行き来しながら味わうことです。
ハタから見れば変だよな、でも、「恋愛とは恥ずかしいもの」ですから、
変であるがゆえに、これはむしろ真っ当な恋愛である、とも言える。

この辺が実におもしろいのです。

ついでに言うなら、あといくつか、押さえて愉しみ尽くしていただきたい
ポイントがあります。

一つは、「夕一」は体調を崩して欠勤してきた「カミヤ・バー」の雇われ人
であることを思い出してください。だから彼は、登場した瞬間、お店に対して
所在なさげです。

二つ目は、「河合の連れ」の面白さです。ベッドに宙吊りにされていた芸人
の彼は、実は「夕一の叔父」だったのです。第二章の最後の電話のシーンに
そのヒントがありましたが、この場面で確定します。「連れ」はそれまで、
ベッドに吊られながらバーに入ってくるという奇矯さを見せていましたが
一転、ここで常識人になって、甥の「夕一」に「こんな夫婦関係でいいのか!?」
と世間を代表するような説教を始めます。このギャップがおもしろい。

最後、三つ目としては、「モモ」と「朝顔」の馴れ初めが、酔った「朝顔」を
介抱するために、「モモ」が「朝顔」の喉に指を突っ込んでいることです。
これは、唐さんなりに「腹話術」を意識してのことです。
本当は、「朝顔」の背中から手を突っ込んで介抱させたかったでしょうが、
生身の人間にそれはできませんから、口から指を突っ込ませています。

「朝顔」は「夕ちゃん」という人形を、「夕ちゃん」の体に手を突っ込んで扱う。
「モモ」は「朝顔」の体に、手を突っ込んで彼に働きかける。
という点が対になっています。

こういうところは、唐さんが実に上手いので、演技を組み立てる時に、
「モモ」が「朝顔」人形の腹話術師として吐かせているように、見せたい
ところです。

以上、第4回目のレポートでした。

↓「モモ」が酔った「朝顔」を介抱する姿勢を下記のように整えれば、腹話術
の姿勢とイメージを重ねられるように思います。
名称未設定のデザイン.jpg


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