3/18(水)『ビニールの城』本読みWS 第6回 その②

2026年3月18日 Posted in 中野WS『ビニールの城』
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↑初演時の写真より。左が「リカ」です。田所陽子さんという方が演じられました。
観たかった!


昨日の続きです。

この、2幕中盤に差し掛かるところで発揮される「リカ」の活躍は素晴らしい。
彼女は、身体を張って、時にコミカル、時に美しいせりふを言って世界を
つくります。1回のワークショップで読み切れる短い時間ではありますが、
彼女は、まさに主役級の働きを見せます。

前提として、舞台に用意された水槽、そこに並々と注がれた水、
沈められた手錠付きの人形は、「河合」と「引田(夕一の叔父)」が用意した
罠であるわけです。「夕ちゃん」らしき人形をチラつかせ、「朝顔」を
おびき寄せる作戦です。

が、そこに、「名なし丸」に扮装した「モモ」がやってきます。
「モモ」にとって、先に「夕ちゃん」を救い出すことができれば、
そこに「朝顔」への道が切り拓かれる、そういうことなのです。

ちなみに、「鳥丸」「水丸」「糸丸」の3人もなかなか良い味を出しています。
水槽に沈められ、酷い目に遭っている人形を指さして、3人が3人とも
自らの人形に「あんな目に遭わなくて良かったね」と語り合い、慰め合って
いる3人は、さながら下世話なPTAのおばちゃんたちが、他人の不幸を
見て、自分たちの安全とささやかな幸せを確認する姿に似ています。
こういう「世間」を描く時、唐さんの筆は冴えています。

話を「リカ」に戻すと。
「リカ」は初め、大切にしているブラウスを惜しんで少しずつ袖を水に
濡らす程度ですが、やがて覚悟を決めます。
「モモ」をビニ本の女の先輩として尊敬し、私生活の厄介ごとを解消して
くれた恩義も感じている「リカ」は、ついに全身で水に潜り、人形を救いに
かかります。そして、その瞬間、水の中から世界(客席の上方)を見上げる
時に、「ビニールの城」を見出す。

身体を張り、自らを痛めつけた人間が幻視を得て、それをレポートするとき、
強度が生まれます。相手役と観客を巻き込む熱量が、「リカ」が見たという
世界を人々にも想像させ、希望を見出させるのです。

後に、2000年を過ぎた唐組公演で水槽に入り続けた唐さんは、
水や泥や、時には塩にも塗れながら、そこから浮上しては、美しいせりふと
美しい世界を見せてくれました。このパターンを「リカ」はしっかりと体現
しています。

第七病棟は蓮司さんと魔子さんばかりではないぞ!
と、唐さんが集団全体にプレゼントしたエールのようでもあります。
私の大好きな場面です。

若く、あまり頭脳明晰でもなく、私生活にも不運が続く、
けれど、人情家の「リカ」に美しい世界を語らせる。
私の好きな唐十郎の美学がここに溢れています。

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