7/8(月)『少女仮面』本読みWS 第4回

2024年7月 8日 Posted in 中野WS『少女仮面』Ⅱ
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↑水道飲みの男の出番の最後、昨日はぐっと進めてここまでいきました

昨晩は『少女仮面』本読みWSでした。
読んだ箇所は2場終盤から3場半ば。
2場は「開眼」というタイトルですが、
その意味があらわになるシーンがやってきます。

当初、人形を操っていると思われていた腹話術師が人形に出し抜かれ、
別れたマリムラの子どもの父親が当の人形だったと知れます。
要は操っていた側が操られ、操られていた側が実は相手を操っていた
という関係が露見する残酷ショーが展開します。

そしてこれが、3場の構造につながる。

スターがファンに君臨しているように見えながら、
ファンがスターを食い物にすることで芸能は成り立っている。
宝塚に限らず、芸能というものはそういうものだと炙り出すのに、
2場が一役買うわけです。

こうして、1・2・3番は、初演者である鈴木忠志さんが
影響を受けた「能」の物語構造である「序破急」にもつながる。

そして3場に入ります。

ここでは、1場の終わりに見初めた少女・貝に、
春日野八千代が熱心に稽古をつけるシーンが展開します。
春日野は貝の出自にちなむ俗っぽさ、老婆との関係を清算して
芸能一途に染まるよう諭すわけですが、これが上手くいかない。
このくだりは、なかなかコミカルでもあります。

一方、稽古のさなかに、この喫茶「肉体」の周囲の状況が
浮かんできます。地上ではどんどん都市開発が進み、防空壕跡に
つくられたこの喫茶店はいま、風前の灯になっているという事実です。
春日野とボーイ主任の思い詰めた様子。

さらに場面が進むと、春日野は貝に自らを打ち明け始めます。
非の打ちどころのないかに見えた春日野もまた、
自身が人間であることを語り始めます。
老いを告白し、舞台に捧げた人生がファンに振り回された
空虚なものであったと貝に話し始める。

この時キーワードとなるのが、1場冒頭から繰り返されてきた
「愛の幽霊」「肉体の乞食」というフレーズです。

要するに、「愛の幽霊」というのは『嵐が丘』のモチーフである
ロマンチックな存在です。死して尚、好きな相手の魂を求める愛の幽霊。
が、人間が生きる、あるいは、人間の欲というものは
そんなキレイ事でありません。やはり、肉体を求める。

失われた自分の体、若さを求める心も「肉体の乞食」。
相手のフィジカルな肉体を愛でたいという欲望も「肉体の乞食」。
すなわち自分は「肉体の乞食」なのだと、
自分もまた3場冒頭で否定した「俗っぽい」存在だと春日野は告白します。

そして、こうした告白を経てなお、幻滅せずに相手役でいてくれる
貝のような存在を求めていたと。いわばスター春日野の人間宣言。

さらに、昨日やった箇所では、
都市開発の重機に放火したボーイ主任に連れられ、水道飲みの男が
再登場します。水道飲みの男は戦後の焼け跡を語って戦後の虚飾を
暴き、また勢いづいて春日野や主任がこの喫茶店内部で繰り広げる
虚飾をも暴いていきます。
スター・春日野に見えた男は、単なる初老の女に過ぎず、
ボーイ主任と春日野は個人的な関係であると喝破していく。

これらがきっかけとなり、春日野の告白が2段階目に入るという
流れです。続きは来週、いよいよ最終回です。

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