8/12(祝月)『煉夢術』本読みWS 第2回

2024年8月12日 Posted in 中野WS『『煉夢術』
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↑20代前半の唐さんはこういったものと行動を供にしていたらしい


昨晩は『煉夢術』本読みの2回目。3場と4場を読みました。

下町には巨大な時計を持つ塔がそびえたち、しかもその時計は
24時を指すとともに止まり、すべての生命が静止した時間が訪れる
というのがこの劇の世界観です。

一見すると抽象的なようですが、
塔=長屋を横から見た姿、停止してしまった時間とは、
何の事件や変化もなく続く下町の日常を表していると考えれば、
これが実に具体的な劇であることがわかってきます。
要するに、若き日の唐さんにとって、それまで過ごした上野での
生活は安穏として不安と不満を覚えさせるものだった。
自分はどうして世に頭角をあらわし、将来への活路を切り拓こうか
という焦りが、こういう設定を考えさせたのでしょう。
同時に、そんな上野下町への強すぎる愛着。

3場は、塔の守り番である中年の男女が新聞の切り抜きや
牛乳瓶のフタの日付から、今日が何日であるかを必死に探っている
様子が描かれます。彼らは静止した時間の中で、自分たちの位置を
確かめようとしている。と同時に、常に時を静止させようとしている
力をひどく恐れています。まるで、24時を過ぎて活動をすれば
命さえも奪われるとでもいうように。

また二人には、20年前に3歳で失踪した子どもがいることがわかって
きます。おそらくその子どもこそが、主人公である青年、地図売りから
時計修理人になった件の青年だということが、容易に想像が付きます。

4場は墓地が舞台です。
青年が鋳掛け屋(街を歩いて鍋釜の修繕を行う)のように時計修理の
セールスしていると、人体模型人形と遭遇します。人形は墓地で自らの
墓碑銘を探し、何とかこの町の住人として資格を得ようと捜索を続けて
いるという設定です。人形は自分の手の中に蛆虫(生きているもの)を
発見して自分も命ある存在に近づいたと喜びますが、その蛆虫もまた
死んでおり、絶望の中でバラバラになっていきます。

青年には、人形との会話の中から、自分がこの町に来てなすべきものの
ヒントが与えられます。時計のある塔を登ること。その中にはオルガンが
あり、24時になるとオルガンを弾く子どもがいる。その子は近ごろ
オルガンを弾くのをやめて泣いている。その子どもに会うことこそ
自分の目的であると思い定めます。

夢の中の自分探しが深さを増していきます。続きは8/18(日)。

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