8月9日(日) 東北巡業4日目

2015年8月11日 Posted in 25_特別野外公演_青頭巾
中野です。
ついにツアー全体の初日を飾る8月9日(日)がやってきました。

今回の東北ツアーは8月6日(木)から25日(火)まで、全20日間で4都市を回るというものです。
秋田市、山形市、石巻市で1回ずつ、最後に訪れる仙台市で2回公演します。
荷物は最小限の野外公演なので仕込みや片付けは速いのですが、その場その場で上演環境が激変するために、稽古時間が多くなります。
段取り決め打ちが効かなくて、それぞれの場所で、即興で動きを組み立てる作業の繰り返し。
それがおもしろさであり、大変さにもなっています。

さて、秋田公演当日、わたしたちに何があったか。
本番の日の朝は、自然と早朝から目が覚めるのを利用して、やっておかなければならないことがいくつかあります。
まずはノートの整理。
昨日の最終リハーサルの結果、どこをどう直すのかを組み立てる。
快晴なので、どうしても昼間は暑くなる。
それなのに、本番のための食事や着替えやメイク時間から逆算すると、どうしても13時くらいに最終調整をせざるを得ない。
たった1回の公演なので、当然、悔いを残すことはできない。
反省したってそれを生かす2回目がない。

劇の中身で上手くいっていないところ、上演環境に役者が乗り切れていないところがあれば、本番までにすべて解消しないと。
しかもひどく暑いので、皆を消耗させないように、時間は最速、最短距離で。
リハーサル中にメモはとってあるけれど、さらに昨晩の様子を思い返して、どこかに穴はないか、もっとよくできる箇所はないか、朝一番に探る。

さらに、せっかく劇の中身がうまくできていても、開演前にお客さんを迎え入れる体制や、本番中の公園内の管理、終演後の段取りに不備があれば、その分だけ公演は減点されていくもの。
料理がおいしくても、接客が悪いよねえ、ということになりかねない。
だから、お客さんの導線など、何度も考えます。
わたしたちからすると、秋田の人が行き慣れたこの場所にどうやって来るのか、想定しきれない部分がある。
だからこそ考え抜く。

中でも、とりわけ恐ろしいのが、本番中の千秋公園内の人々の動向。 例えば。 昨日まではいなかったけれど、たまたま本番の日だけ大勢の犬や子どもたちが通り過ぎやしないか。
鳴き声、泣き声の嵐になったらどうするか。
あるいは。 例え相手が大人だとしても、エキセントリックなおじさんがやってきて、客席横や後ろに陣取った場合。
お金を払って観ている人たちが損をした気になりはしないか。

誰かがタダなら、自分もお金を払いたくないのが人情です。
それを覆すためには、わたしたちが体を張り抜いて、これはお金払ってあげないと可哀想だという熱演をするしかない。
心配は尽きない。
やがて開き直り、そうだ、野外劇を見に来てくれる秋田の人々は、皆、優しいに決まっていると信ずるに至る。

ハイ。ノート作り終えました。
次に、この日記書き。
これ、時間かかるんですねえ。
いままでは劇団員に任せっきりで、自分でやってみて、今回は改めて彼らの大変さに気づかされました。 
あれだけの稽古や作業のあとに、これを書いていたなんて。
だからもう、改めて自分がやった方がいい。
自分は本番中はあまり動かないですからね。明らかに体力が残っている。
大久保さんとの約束でもある。

最後、準備の仕上げに、ガソリンスタンドに行きました。
本番を控えて、発電機の燃料を満タンにしておくためです。
あとは本を読んだり、散歩したりして、10時半の集合時間へ。

10時半。
皆が元気に集まってきて、1日の動きをミーティングします。
そして早速、学生たちと稽古、稽古。

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彼らは街でチラシを撒くという仕事があるために、先に絞りました。

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昨日のあのザマはなんだ、もっと動け、声を出せ、という感じで。 汗だくにしてやって、朝からこんなに走らされたら本番まで保たないですよ、というくらい練習させないと、なかなかリミッター外してくれない彼ら。

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大丈夫。お客さんくれば、君らスケベ根性出してウケたくなるから、体力が本番1回分くらい残っていることに、必ず気づく。

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よしよし、体が起きてきた。

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じゃあ、チラシ撒き、張り切って行ってこい。
いままで宿舎と公演場所の往復だったから、ついでに秋田駅前の街の様子も見て来い。

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12時からは劇団員の稽古。
公園内にある日陰で打ち合わせた後、エイヤッと実際のステージに出て直射日光と闘いながら稽古する。
14時終了。

ここで珍客。 学生たちが撒いたチラシ効果で、マスコット・キャラクターの「りずむ」が来てくれました。

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遅めの昼食をとって、いよいよ15時半メイク開始。

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ここで心配事ができる。
天気予報によれば、16時から90%の確率で雷雨とある。
実際に、ぽつりぽつり感じるし、不穏な雲も近づいている。
こうまで炎天下で準備して本番だけ雨だったら報われない。

降るなら早く降ってくれと思いつつ、雨対策として、公園内に簡易テントを2機建てた。
これならば急に降ってきたら避難できるし、さっと動かせば、観客の頭上だけはあらかた覆うことができる。 突貫でそんなシミュレーションも行った。
雨が降ってきたら、本番中でも「中断!」って叫ぶからな。
そしたら出ているヤツは観客の誘導、他の連中はテントの移動、などと示し合わせる。
そういうわけで、あまり緊張している暇はない。

17時を過ぎれば、なんと早いお客さんの集合。

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秋田の人たちは、スタート18時のずいぶん前から受付に集まってくれている
よし、前座パフォーマンスは17:45に始めよう。
伝令が飛び、観客へのアナウンス。

17:45。
学生ユニット「ザ・クロナイン」のリーダー、ライオネル田中登場。

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100人近く集まった観客の視線を集め、他のメンバーも拍手のなか集結。
暖かい反応に乗せられて、彼らの身体はキレている。
声もよく出て、途中で力落ちする気配もない。

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安心して見ていられた。
みなさん、喜んでくれている。メンバーもそれに応える。
これまで準備してきたものがようやく結実していく。

20分間、声援にあと押しされて前座を終えると、観客を劇場空間に誘導する。
イスを用意し、座布団を用意し、トイレを促し、うちわと虫除けスプレーを提供する。
これも学生の担当。 段取りは事前に練習していたけれど、今日は初日なので、サポートにワダ・タワーを付けた。

自分があいさつに立って、劇本編もいよいよ開演。

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唐さんの劇は、力の抜けたお笑いと、突然訪れる詩的な求心力が魅力。

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難しく見て欲しくないと思って、公園内をフルに使って、バカバカしく作ってみた。
真剣にふざける。

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その想いが伝わったのか、よく笑ってくれている。
それでいて謎めいたシーンになると、じっと見ている。

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唐さんの可笑しさと気高さとを体現しきる役者。
休憩をはさんで約2時間が終わった。

多くの観客が会場に残ってくれて、乾杯をし、また来てよと言ってくれた。
役者たちも、そこここでお客さんの輪につかまっている。

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そういう光景を見ながら、ふと、明日の夜には片付け・移動を済ませて山形にいることを思い、呆然とする。
全体解散の後、片付けや飲み会を終えて学生を家まで送り、午前2時に楽屋に帰ってみれば、今日も鷲見がよく寝ている。

彼のあとを追って、自分も床に倒れこむ。

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