9月5日(土) 臨港パーク5日目

2015年9月 6日 Posted in 25_特別野外公演_青頭巾
中野です。
見事に晴れました。
本日は千秋楽、ずっと取り組んできた演目『青頭巾』ともいよいよお別れです。

蜷川さんや流山寺さんのように、一年にたくさんの演出作品を実現する人たちもいますが、自分の準備のスピードを鑑みれば、年に3〜4本が限界です。
ですから、人生で向き合える台本の数自体もすごく限られている。
今日を終えれば、自分の本棚に、またひとつ懸命に取り組んだ台本がおさまるわけですが、この時はいつもいつも、寂寞とした想いにかられます。
と同時に、『青頭巾』の 登場人物や世界はいまや自分の中にしっかりと堆積していて、ちょっとリハビリしさえすれば、いつだって取り出してやるぞ、という感じでもあります。

とにかく一旦さよならですから、爽やかな別れにしたい。


9月5日(土)横浜本番2日目は『青頭巾』全体の千秋楽

6時に起きると頭痛がする。
どうやら寝違えたらしい。
何もこんな日に、と思って首筋をゴリゴリやりながら、いつものようにノートを作る。

といっても、すでに手直しするべき箇所は少ない。
科白を言ったり動いたりする時に、頑張りすぎてはいけない、とか。
どこか強かに、ニヤリと笑ってみせるような余裕があると良い、とか。
そんなシーンがいくらかあった。
それに、今日は学生パフォーマンスチーム「ザ・クロナイン」の最後の舞台でもあるので、彼らを送り出すセレモニーについても考えた。

8時に出来上がったプランを元に、何人かに電話をかけて指示を出す。
特に齋藤には、散歩がてら彼の家に行って、全体のあらましを話しておいた。
ついでに大学に寄って、セレモニーに必要な荷物を調達して、植物への水やりもする。

10時に帰宅し、身支度を整えて現場へ。

集合の少し前に臨港パークに着いてみると、あまりの人の多さに驚く。
ほとんど半裸で体を焼いている人、ボーイスカウト風の少年少女、ランナー、観光客、釣り人で溢れかえっていて、目を見張る。
こりゃ昨日とは桁が違う。
かなり大変そうだ。

11時半に全体集合。
体操をして打ち合わせ。
今日はみんなの親が大結集するらしい。
かく言う自分も父が名古屋からやってくる。

12時。 皆に現場の設営を任せて、自分は助手席に林麻子を乗せて、トラックで大学へ。
途中、父を横浜駅でピックアップ。
大学に着くと、現場で出たゴミを捨て、さらに学生のセレモニー用に麻子の伴奏練習。
トラックの荷台にエレキピアノを乗せて、再び臨港パークに向かう。
途中、3人で昼食を済ませ、皆のお弁当も買って帰る。

14時過ぎに現場に戻って、皆で暴れまわるシーンを稽古。
そのあと皆は昼食。
15時から、エンディングのシーンを変更。
16時、本格的にメイクや着替えを開始。

この頃になると、例のヘリコプターがガンガン飛んでいる。
またワダ君が挨拶に行くとともに、今日のフライトの予定を聞いてきてくれた。

残念ながら、今日は夜もすごい頻度で飛ぶらしい。
まあ、仕方ねえ。
せいぜいヘリコプターとも遊んでやるさ、と役者に開き直りを要求。

17時。
土曜だけあって、お客さんの集まりは早い。
昨日と今日、2度通ってきてくれた人もいる。
出演者や学生たちの父兄さんと、ご挨拶ラッシュ。
久しく会っていなかった横浜ならではのお客さんが多くて浮かれていたら、急に風が出てきた。

空を見れば、なんだか急に暗雲垂れ込めている。
天気予報は晴れを宣言しているがぜんぜん信用できず。
だが、強気でいこう、強気で。

一点良いことが。
公園内にいた人たちが天候の変化を受けて激減、本番を前にすっかり静かになった。

17時半。
早く集まったお客さんの期待に応えて、早めに前座をスタート。
最後なのに、特段気負わずに学生たちはやっているように見える。
一方でたくさん見に来て下さった親御さんは、これを何と思うのだろうか。

遠くから見ていると、後ろのベイブリッジと彼らのコントラストが鮮烈。
ああ、この何と名付けたらよいかわからない演し物も、見納めだなあ。

18時過ぎ。
大入りで口火を切るラストステージ。
楽日の劇は独特。
これまであんなに体に刻み付けてきたのに、ひとつ科白を言うたび、ひとつ場面を終えるたび、もう忘れてしまっていいのだ。 

だからこそなのか、皆丁寧だった。
もちろん、お客さんとの間に立ちはだかる強風の壁を突き破るためもあったろうけれど、ここまでやってきた勢いがありながらも、ひとつひとつ言葉や所作を置いていく感じが、皆も別れを惜しんでくれているようで、自分は好きだ。

ヘリコプターとも戯れつつ、休憩をはさんで2幕へ。

雨が降ってくる気配は微塵もないが、風はとにかく吹き続ける。
湿っぽいベタベタした風は、明日から雨降らせる気満々といったところ。

私たちの舞台装置は大きく3つある。
ビールケースでこしらえたテキ屋と、ザクロの木のハリボテと、初夏に目白の業者に買いに行った紅白幕。

このうち紅白幕が、2幕の半ば過ぎでパタリと倒れた。
本当は最後の最後で熊野と禿が揉み合って倒れるのだけれど、風で先にいかれてしまった。
こうなると後ろの橋が丸見えで、行き交う人々もよく見える。
前景では劇の世界が展開し、遠景にはカップルやランナーたちの姿。

後で皆に聞いたら、すでにあまり人もいないし、劇も終盤で盛り上がっているから、もうこのままいってしまおうとメンバーの誰もが思っていたという。
自分もそのひとり。
もう細かいことはどうでもいいや。

勢いで昼のうちに改造しておいたエンディングに突入して、それから今朝から突貫で準備した「ザ・クロナイン」の解散セレモニーもやりきり、この一連の公演は幕を閉じた。

お客さんが多すぎてすべての人たちと語らうことはできなかったけれど、強烈な海風にさらされながら大勢の人たちがコップを手にして喋って喋り倒している。
櫓からさす明かりで浮き上がっている宴会は盛大で、ひとりひとり橋を越えて帰って行く様子も画になっていた。

21時を過ぎてお開きにすると、差し入れ大会。
頂き物を真ん中に並べて、皆で食べ尽くす。

本番中にそれぞれが何を考え感じていたか、終演後にお客さんとはどんな話をして、知人や家族はどんな感想を持ったか。
ワイワイやりながら報告し合い、一息つく時間。

明日の片付けが終わったらこれからどうしよう、なんて、これは学生たちとの話題。
劇団メンバーとは、次の準備が一週間後にすぐ始まるし、11月まで走り抜けようという話をした。
自分もこの公演の片付けと押し寄せる次の準備で、むしろ予定は混んでくる。
ああ、本番の日々はよかったなあ、としみじみ。

夜のうちにできるだけ片付けようということで、23時過ぎまで、翌日の負担を減らすために粘った。
家の遠い者から、「おつかれさま」と行って帰って行く。

自分はベンチに座ってこの日記をまとめていたが、虫よけスプレーの効果が切れたのか、ここにきて大量の蚊に襲われ、気も狂わんばかりに全身が痒い。

集中力もすっかり切れて、大量のムヒを塗りたくりながらもさらに新たな蚊に襲われる始末。
日記のアップはこうして翌日となってしまった。

今朝もまだ、強烈に痒い。




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