唐十郎フェスティバル(4) 〜誤算2
唐ゼミは、本公演で作業は危険なものだと意識せざるを得なかった。
舞台監督、前田裕己。作業の中心を担う彼は総合的に舞台の裏側を担っている。その彼もまた、怪我をした。小川が折ったなら、彼は切った。
電動工具は作業を早く進めるにあたり、大変に便利な道具である。だが、同時に危険なものでもある。甘く見ていれば、それは凶器になる。前田は作業の要を担うとともに、唐ゼミの中で熟練している部類の人間である。
その彼も、何を油断したか電気ノコギリに指を切られかけた。ほんの一瞬の油断であったようだが、指を縫う怪我までになってしまった。電動工具を止めるのがもう少し遅ければ、指が飛んでいたかもしれない。作業中、唐ゼミでちょっとした怪我は多々あるのだが、縫うような怪我に至ったのは始めてである。そして、怪我したのが作業慣れし、怪我をしないだろうと思われていた前田であった。頭から水を被されたような気分だ。作業に慣れてきた唐ゼミの劇団員も気を引き締め直すこととなった。
ただ、ひとつ前田が怪我をしたことで、作業が滞ると思われていたが、逆に作業が円滑に進んだことは彼にとっては誤算である。
彼は今回のことではっきり自覚した。作業の中心を担う彼は、作業のし過ぎであるということにようやく気づいた。全体の作業進行を円滑に進めるために一歩引いた位置から全体を仕切ることが重要である。怪我したことで強制的に作業のできなくなった彼は、指示出しだけにまわることで、全体が流れるように動くようになった。
今回の大阪公演前に、唐ゼミで主力である二人が怪我をしたことは痛手だった。そのことで、唐ゼミの劇団員がもう一度気を引き締め直すことになった。
裏方の作業において、反省すべき点も多々あった公演となった。
<Toshinobu Adachi>
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