破里夫と少年

2004年6月13日 Posted in 2006以前

唐ゼミは横浜国大公演に向けて目下劇場設立中である。
仕掛け満載の舞台のレポートは、少し先に送るとして、今回は次回公演「盲導犬」の主役二人、盲人・影破里夫とフーテン少年について。

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チーム・ヴェネチアでは渡辺幸作と前田裕己が熱の篭もった二人を演じる。
二人はみなとみらい公演「ジョン・シルバー」で床屋役と小男役として共演した。床屋は、自分の店に突如現われ嵐のように言葉をまくしたて去っていく小男にあきれかえる。小男のぼけと床屋のつっこみは一見漫才のように思えるがしかし、小男が自分の記憶を取り戻したとき、小男が忘れていたものを全て知っていたかのように、床屋は笑うのだった。
どたばたと劇全体をまぜっかえし、クライマックスに衝撃を持ち込んだ二人が、今回は不服従の犬ファキイルの話をすすめていく。超越的なものを見透かす破里夫と、リアリストでニヒルな少年の掛け合いは、前回と立場が逆転しているようで興味深い。
どちらにしても、観客はおそらく汗をかく。

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チーム・コートダジュールでは新堀航と土岐泰章が痛快に掛け合う。
この二人、第四回公演・金沢特別公演の演目「動物園が消える日」の中で、灰牙役・田口役として絡んでいる。新堀航が好演した灰牙は、飄々としてどこか達観していて、命を惜しまないほどの執念の持ち主。自分の計画に一度協力した田口に対しても、月日を挟んでなお固執していた。
破里夫と少年の間柄にも、時折同じようなものがうかがえる。少年を自分を導いてゆく星であると見込んだ破里夫は、少年と自分を輪のようにつなぐ〔風〕を起こそうとする。土岐泰章扮する少年は、破里夫の言動に眉をひそめつつも、目の見えない破里夫にその場の状況を親切に意外と素直に教えてしまうようなところが妙に可笑しい。
息の合った掛け合いに期待大。

(Shigeno Itoh)


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