『盲導犬』舞台完成版

2004年6月28日 Posted in 2006以前

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銀板のコインロッカーに、無機質なデジタル文字。
立ち往生をしたかのような柱や天井から重圧を与えるダクトは赤く錆び、未使用のロッカーからは青いキーホルダーが主張無くたれ下がっている。
まるでヒールで歩くとかかとの音が当たりに響き渡りそうな静寂のコインロッカー。
今回の盲導犬の舞台完成版である。

初めに目の当たりにするとあまりの飾り気のなさに「舞台」といったものから違和感を覚えるかもしれない。しかしいざその前に腰をすえると、まさに金色の沈黙などというものを感じ取れるに違いない。

「舞台」を舞台空間内では終わらせない舞台。今回「盲導犬」の劇場全体がそれを体現するよう手が施されてきた。よく見れば、最も年月の液体を浴びた330のロッカーを筆頭に、今にも何かを語りはじめそうだ。然るべくして物語が始まり、然るべくして劇場は開いていく。四角い舞台の板から、あらゆる方向に広がっていく。
唐ゼミ初、舞台という名の役者の登場である。

善意の毛を噛み切るべく身を潜めるファキイルの息遣いを、是非劇場に足を運び聴いてみていただきたい。

(Shigeno Itoh)


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