テント裏の道

2004年10月19日 Posted in 2006以前

初公開・テント裏の道である。
tentura.jpg
客席から舞台を越えてこの道を見ることがもしあれば、人物が背景にとけ込んでいくように見えるかもしれない。
舞台上の人物がこの道を通ることがあるならば、背景ならぬ“腹景”を客席から舞台の奥へと移し、景色を腹の中にとりこんで、より広い空間に“生きる”ことになると言えるだろう。

今頃になると、8号館裏に群生する低木のしだれた枝に、多くの赤い実がなって、蒼テントとのコントラストが非常に美しい。しかし日が沈むと、けして辺りが明るくなるほどに電灯は多くないので、青も赤も黒に染まり、横浜という都会には珍しく暗い夜になる。特に暗いこの裏道にいると、方向定まらぬ闇に惹かれてしまう。黒いチューリップに恋する気持ちについて、考えを巡らせたくもなってしまう。


〔いとうしげの〕


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