最終講義レポート:中編

2005年2月12日 Posted in 2006以前

唐ゼミ上演戯曲アンソロジーが始まった。
はじめに唐十郎の「オテナの塔」が流れ、白い緞帳に映像が流れ始める。なるほど白い理由はスクリーンだったからなのか。タイトルテロップとフェードで次々に映し出される劇中の場面。編集したのはゼミ生の土岐泰章らしい。すこし擦れた映像が、短いようで長い唐ゼミの歴史を思い起こさせる。

『24時53分 塔の下行きは竹早町の駄菓子屋の前で待っている』
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中野演出での現在の劇団ができる前の作品。黒コートの男が導く"塔の上”は、死の場所である。鞄を抱えたある男が導かれ、傷ついたある少年も母親から離れ導かれていく。やがて登場した少女が、兄との約束の歌を唄う。しかしその兄、鞄を抱えた男がいるのは"塔の上"だ。儚い少女の歌声は、誰にも届かず澄んでいく。
 「おぼろに響くオーボエ吹けば 誰かがあたしを思い出す ここにいるって いつしかきっと」

キャスト/男…杉山雄樹  ある男…岩元慎弥 少年…山崎雄太 母親…伊東しげ乃 女…古川望

『腰巻お仙~義理人情いろはにほへと編』
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少年・お仙は忠太郎に向き合うと自分の母親について語り始める。その言葉は重く、時に怨みのようで、時に哀しみのようでもある。母親から危篤を知らせる手紙が届くが、お仙はその手紙を無言で燃やす。その炎はまた、お仙の心を映すように静かに燃える。やがてお仙は立ち上がる。何処へ行くのかという弟の問いに、海辺を車で走ってくると答えるのだ。
 「このまま目を瞑って海に突っ込んでしまいたい、どこかの防壁にでも衝突してしまいたいと、ふと思うそんな時、僕は母さんのことなんかひとつも考えやしない」

キャスト/忠太郎…土岐泰章 お春…小川尊 ボーイ…伊吹卓光 5ヶ月…新堀航 犬…小林佑基 お仙…禿恵

『ジョン・シルバー』
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待ち続ける女、小春のもとにシルバーの歌が聞こえてくる。聞こえるはずのないその声に紳士と床屋は慌てるが、その歌声とともに現れたのは一人の小男。小男は海辺で、黒く光る杖を拾ってきた。紳士は問う、そこにナイフやオウムが存在しなかったかと。小男は、首を振る。シルバーは、海から上がってこなかったのだ。海に消えた75番目の人間は、どこへ行ったのか分らないままだった。小春は笑う。
 「あたし、こんなにシルバーに近づいたことないわ。」

キャスト/らくだの姉…禿恵 らくだの妹…伊東しげ乃 紳士…新堀航 床屋…渡辺幸作 小春…椎野裕美子 小男…前田裕己

『動物園が消える日』
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閉鎖された動物園の副係長・灰牙の頭の中から、動物園の灯は消えない。かつて同じ動物園でもぎりをしていたオリゴはそれを知っていた。オリゴはその動物園がともに見たいと灰牙に望む。だから自分の持つ最後の切符にパンチバサミを入れてほしいと。灰牙はポケットに手をいれる。取り出したのは、オリゴに返すための時計だった。彼が示したのは、動物園の灯を、たった一人で燃やし続ける決意だった。

キャスト/灰牙…新堀航 台場…渡辺幸作 オリゴ…椎野裕美子 他

『少女都市からの呼び声』
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兄の田口が眠った代わりに、病院へ現れた少女、雪子。田口と雪子の二人は現実の世界で、ともに目を開けることはない。少女は名前のとおり、雪のように儚い存在である。現実での存在を確かにするよう、以前兄に言われたとおり、有沢という男を頼ろうと雪子は彼にすがりつく。
 「根雪 粉雪 ぼたん雪 あたしのドレスを飾っても 逃れられぬこの身がうずく」

キャスト/有沢…渡辺幸作 ビンコ…伊東しげ乃 田口…安達俊信 雪子…椎野裕美子

『鉛の心臓』
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「イエスの箱舟事件」に巻き込まれた娘の親たちにつきだされた、とある女親と男親。彼らは自分の娘が帰ってくると信じてやまず、とうとう夕顔という女を自分たちの娘だと信じこむ。そこへ、元キャバレー嬢であったつばめという女が、自分とゆかりのある夕顔を迎えに来る。そのつばめこそ、事件の只中にいた女であったのだ。事件の再来を待ち望んでいた男・オヤシラズは叫ぶ。
 「この構図だ。なにもかもあの八王子の暴動の姿に似ています。」

キャスト/つばめ…椎野裕美子 オヤシラズ…前田裕己 男親…小川尊 女親…古川望 にわとりの介…小林佑基 夕顔…禿恵 他

『盲導犬』
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盲導犬学校の教師たちに導かれ、街は少しずつ狂気に侵されていく。その狂気を受け入れなかった盲人と少年は激しい攻撃を受け、抗うも力を尽かしてしまう。盲導犬学校教師の妻であった女・銀杏も、すでに街に毒され、犬のように夫に従い、長い間街の空気にさらさなかった330(ミサオ)のロッカーを開けようとする。すると、夫はロッカーの向こうに潜む影を見て、驚愕の声を上げた。
 「あっ、お前は――」

キャスト/銀杏、トハ…禿恵 先生…杉山雄樹 盲人・影破里夫…新堀航 フーテン少年…土岐泰章 他

『黒いチューリップ』
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パチンコ屋で生活している女ケイコが、姉のノブコを牢獄から出そうと奔走しているうち、ノブコが目の前に現れる。ノブコは元恋人の春太とよりを戻すため、黒いチューリップを作ろうとしていたが、シャバに出てきてそれが失敗であったと知る。絶望に打ちひしがれる姉を見て、暗闇から出てきた姉・ノブコが、もう一度光の下で暮らせるようにと、ノブコの元恋人である春太に、牢獄へノブコを迎えに行くと誓ってくれた言葉をもう一度言ってほしいと懇願する。

キャスト/ケイコ…椎野裕美子 エコー…土岐泰章 春太…渡辺幸作 ナルヒサ…伊吹卓光 ヤヨイ…伊東しげ乃 ノブコ…禿恵 他


唐教授が「走馬灯」と表現したように、歌と映像と芝居が目の前を駆け抜けた。
いよいよ後編は怒涛の講義エピローグ、唐教授が路地に帰っていく瞬間をお届けする。

report by C


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