8/6(木)一瞬の勝負(津内口)

2020年8月 6日 Posted in 日々のこと
津内口です。公演に向けた稽古が始まりました。
相手役を目の前に台詞を読むことの有難みを噛み締めています。(少人数ではありますが...)

相手とコミュニケーションをとるということについて、最近印象的な出来事がありました。

前にも書きましたが、劇場の仕事でシニア対象のダンスプロジェクトに関わっています。
プロジェクトリーダーは安藤洋子さん。

先日、おうちでできるダンスレッスンの動画を製作していただきました。

撮影中、"仮想シニア"として、私と中野さんも撮影に参加することになりました。
衣装をお借りし、簡単な振り付けを覚え、ドキドキしながら椅子に座ります。
さて・・・と思った瞬間、安藤さんから衝撃の一言。

「振り付け部分が終わったら、他の人と場所を変わったりして、自由に動いて」

「自由に動く」...これほど私が苦手にしていることはありません。
他の人と場所を入れ替わるのも、ちょっとした目配せや雰囲気です。
「どうすればいいんだ...!」と悩んでいる内に撮影が始まってしまいました。

安心できる振り付け部分は、あっという間に終わり、やってくる長い長い "自由" な時間。
同じ振り付けを繰り返してみても長くは続きません。
覚悟を決めて立ち上がると、即座に他のダンサーさんがそこに座り、私の椅子はなくなりました。
辺りを伺っても、私が座れる椅子は一つ。安藤さんの椅子のみです。
おそるおそる安藤さんに近づいていく、仮想シニアの私。

普段は明るく気さくな安藤さんですが、踊りの最中はまるで別人。強いエネルギーを放ちます。
観客として客席で安藤さんをみている時にもそのエネルギーを感じていましたが、
同じフロアに立った時に受けるエネルギーは想像以上でした。

エネルギーを間近に受け、すぐに目を逸らしてしまう私。
(今考えると、目があったかどうかも定かではありません。)
怯える私を尻目に、安藤さんは席を譲ってくれました。お情け以外の何ものでもありません。
「ま...負けた...」と思いました。


「踊っている人と、その場で起きていることとコミュニケーションを取って踊らないと面白くない」
「ダンサーは言葉を持ちなさい」
直前におっしゃっていた言葉が思いだされます。
若いダンサーたちにかけられた言葉ですが、私にもグサリと刺さりました。
私たち俳優は台詞をいただいているけれども、
果たしてそれを自分の言葉として持てていると言えるだろうか。
全身で相手とコミュニケーションを取れているだろうか。

安藤さんとの一瞬の勝負は完全な敗北でありましたが、(当たり前ですが)
とても貴重な体験をさせていただいたと思っています。

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(水色のTシャツが私。カメラに被ってしまっている時点ですでに負けている。)

津内口






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