10/3(木)アーキタイプの魅力

2024年10月 3日 Posted in 中野note
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↑これまで流布してきた多くの翻訳はゲーテによる改訂版をもとにして
いるそうです。これはオリジナルを翻訳したとのこと

無骨で荒削りな原型か、洗練された改訂か。
自分はどちらかといえば前者が好きで、しかも改訂の過程で作者が
何を考えたのか、オリジナルはどこが上手くいっていないと思ったのか、
そういう思考の痕跡に思いを巡らせるのは尚好きです。
その上で、上演するのだったら原型を選ぶのを基本としています。
原型=アーキタイプにはそれだけの面白さがあります。

『少女都市』『少女都市からの呼び声』を併せて研究したいと
考えるのも、そんな好みが底流にあるからです。

今年の初めに出版された光文社新訳文庫の『若きウェルテルの悩み』
は、そのような荒削りな力に満ちて、青春期に起こる空回りの極北を
見せてくれました。主人公ウェルテルの暴発ぶりは痛快なほどで、
被害者感がゼロなところが魅力でした。
勝手に惚れて勝手に死ぬ。ウェルテルのパワーは嵐を思わせます。
繊細で青白い青年でなく、すっかりのぼせ上がって大ナタを
振り回す感じがとても良いのです。

唐さんは『若きウェルテルの悩み』も好きだし、
あほロマンチックな青春を愛するところがあります。
ローリング・ストーンかつ、どうにも止まらない勢い。
訳者の酒寄進一さんが、またひとつ良い仕事をされています。



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