10/6(月)『お化け煙突物語』本読みWS 第8回-最終回 その①
2025年10月 6日 Posted in 中野note
昨日は『お化け煙突物語』オンライン本読みの最終回でした。
その内容をレポートします。
おさらいすると。
この物語は、主人公「江ノ島カイ」を中心に進んできました。
「玉の井の女郎蜘蛛」とあだ名された娼婦「ツレちゃん」を養母
とする「カイ」は、亡き「ツレちゃん」の遺品を求めて、鉄道病院に
やってきていたのです。「ベッド」「行李」「野呂松(のろま)人形」
という3つ、目的の遺品です。特に「野呂松人形」は重要で、
この人形は娼婦の仕事を見守り、苦界に生きる娼婦たちの心を
清浄に保つ品であるという語られ方をしてきました。
さらに、「カイ」自身は娼婦にならず、ダイカスト・メッキ工場で
働き始めたわけですが、彼女の研修を指導した先輩「金田」と
事故に遭い、お互いの手に傷を負ったことに運命を感じてきました。
「カイ」の手には「蜘蛛」のような赤黒いアザができ、金田の手は
動かなくなりました。やがて金田は工員をやめ、さえない探偵と
なった。
一方、この物語で敵役である「盲人たち」は、戦後の日本を
支えた鉄道関係の労働者として、「お化け煙突」に慰めや癒しを
見出してきました。
が、「大塚の母」が商ったメチル・アルコールの影響で失明し、
大好きな「お化け煙突」を眺めることができなくなった。
そうこうするうちに煙突は解体されてしまった。
だから、さらなる「慰め」を求め、かつて「ツレちゃん」の
お世話になった彼らの矛先は「カイ」に向かうわけです。
「蟬丸」をリーダーに、「カイ」に「慰めてくれ!」と迫っている。
ここまでが昨日の最終回に至る前段です。
で、これからが昨晩に読んだところ。
「盲人たち」にはがいじめにされた「カイ」の前に、
「野呂松人形」が現れます。この「人形」の前で慰められることを
望む「盲人ら」はよろこびますが、すぐに人形は壊されてしまう。
それは、この劇の一幕で「カイ」を男性と思って恋し、
乙女心を引き裂かれた「本間玲子」の仕業でした。
復讐に燃える「玲子」と、妹の剣幕におどおどする「姉」の出番が
こうして最後にやってくる。
「人形」の前で慰められるという希望が絶たれた「蟬丸」は
激怒してさらに暴力的になりますが、ここで、手の動かなかった
「金田」が飛び出し、鋭利な傘で「蟬丸」の喉を突きます。
「金田」は殺人を犯してしまったと悲嘆に暮れ、「カイ」は「金田」に
一緒に逃亡するよう誘います。が、その誘いを非現実的として退けます。
二人の足並みは揃わない。
ところが、ここで「蟬丸」が復活します。
彼は戦後の生活の中で異常なまでの垢に包まれた肉体を持っており、
その垢で傘の威力を吸収、「蟬」らしく脱皮して「カイ」に迫ります。
と、ここで、帰ってきた「大塚の息子」が、「盲人たち」に視力が
無いのを利用し、警察を連れてきたような振りをして、「蟬丸」らを
撃退してしまいます。
「姉妹」も「盲人たち」も「大塚」も「母」もいなくなった舞台で、
「カイ」と「金田」は語り合うも、やはり二人の歩調は揃いません。
今度は「カイ」が別れを望む。
すると、「人形の首」が動き出し「カイ」に語りかけます。
これまでカイは、自分のことを他人に色目を送って慰めるばかりだと
思ってきました。しかし、「ツレちゃん」はずっと「カイ」を
見守ってきたのです。誰かに見られてきたことを「カイ」は実感する。
その表れとして、「カイ」の背中には「ツレちゃん」から引き継いだ
「女郎蜘蛛」の紋様が広がっていきます。
気づくと、「カイ」は玉の井の娼婦となっていました。
女衒の「男」に管理される辛い生活です。お店の屋号は「江ノ島屋」。
この劇で起こってきたことは、すべて娼婦の生活のなかで見た
夢のようでもあります。
しかし、厳しい現実を突き破るように「探偵・金田」はやってきました。
「カイ」に順番待ちする「客たち」を押し除け、動かなかった手を動かし
「カイ」を傘で刺します。すると「カイ」に宿る「蜘蛛」が血が通い、
精気を帯びます。「カイ」の必殺の色目は復活し、再び「金田」はその
視線に射られます。江ノ島屋のベッドが動き出し、再びトロッコと
ともに世界に飛び出す「カイ」を、「金田」は追いかけ始まる。
というエンディングでした。
・・・あらすじをまとめるのにかなりの分量になったので、
明日に説明を補足します。
↓写真集『唐組』に掲載されている「蟬丸」の脱皮シーン。唐さんです
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