1/13(祝月)乱腐(らんぷ)たちの出自(『唐版 風の又三郎』WSより)

2025年1月13日 Posted in 中野note
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今日で3日間に渡る『唐版 風の又三郎』リーディングWSを終えました。
が、そのレポートは明日に回します。
というのも、帰りの車のなかで「あ!」と気づいたことがあったからです。

それは、自分たちの御神体ともいえる鶏を殺されてしまい、
乱腐(らんぷ)をはじめ、珍腐(ちんぷ)、淫腐(いんぷ)の
元軍人、元自衛官、現在はしがない私立探偵の3人が、
主人公の織部(おりべ)を犯人と決めてかかるシーンについて、
もうひとつ発見があったのです。

リーダー乱腐は、
「パックリ・チョンガー」と言って織部を脅します。
これは朝鮮語で、独身男の筒という意味。
要するに、お前の肛門を犯すぞ!と織部に言っています。

さらに、「ソーニー・ピータン!」とも織部に言い放ちます。
今度は北清地方の言葉で、「お前の尻を犯しくるるぞ(犯してしまうぞ)」
と迫っているわけです

私が気づいたのは、この「朝鮮語」「北清地方の言葉」という
羅列が、そのまま乱腐、あるいは教授という元軍人がたどってきた
軍歴を示しているのではないか、ということです。
彼らは朝鮮半島、満州に従軍した兵士たちだった。
そう捉えることができるように思うのです。

乱腐をはじめとして、帝国探偵社の面々が尊敬する
「片翼帰還の英雄」=樫村禎一は上海・南京と転戦していますから、
この点からも彼らが南方でなく、大陸に赴任していたことに理が通ります。

唐十郎の戯曲が描いた軍人たちとしては、

1969年『少女仮面』『少女都市』→満州の軍人
1970年『愛の乞食』→満州・朝鮮半島の軍人
1971年『吸血姫』→満州の軍人
1972年『二都物語』→朝鮮半島の軍人
1973年『ベンガルの虎』→ビルマ・インパール(南方系)の軍人
1973年『ガラスの少尉(ラジオドラマ:ギヤマンのオルゴール)』
           →ジャワ(南方系の)軍人
1974年『唐版 風の又三郎』→満州・朝鮮半島の軍人

という流れで描かれています。

こうして、また一つ乱腐のちょっとした発言を頼りに、
帝国探偵社の面々の人格、キャラクターが像を結んだように思います。
そう考えると、ふざけたような上の写真のページのやり取りの中にも、
男たちの奮闘や苦労がにじんでいるように思えてなりません。

・・・と、このような発見の積み重ねが、俳優の役づくりを
克明にさせ、やがては作品全体を大きく磨くのだと自分は考えます。
小さな発見ですが、大きな前進。

ワークショップを通じ、皆さんと実地に台本を読むことができて
私はほんとうに良かったと、この一事だけでも痛感します。
そして、このような発見のよろこびを理解し、共有してくださる
皆さんがいることに、感謝が尽きません。
(事後で申し訳ないですが、これを読んだら皆さん「なるほど!」
と思ってくださるはず!)

皆さんとの本読みを通じて、またひとつ唐さんと会話することが
できた、3日間が終わって一息つきながら、そういう思いでいます。

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