1/18(土)ついつい期待に応えてしまう
2025年1月18日 Posted in 中野note
また再開します。明日と来週で、12月から読んできた『御注意あそばせ』
が終わる。
『唐版 風の又三郎』と『御注意あそばせ』が並んだことは偶然です。
偶然ですが、この二作には大いに関わりがあって、『唐版 風の又三郎』
二幕でヒロイン・エリカが恋人の肉を食べるシーンを描いたために、
唐さんはカニバリズムに関心を持つ作家ということになり、例の
佐川一政さんから自身の体験を映画化するよう白羽の矢がたった
という流れなのです。
カニバリズム。確かにエリカの行動はそうに違いありませんが、
私には、唐さんがさほど大きな構えでエリカの食人を描いたように
思われません。しかし、それを大仰に捉える人がいて、こうなると
唐十郎は、多少なりとも無理矢理に、期待に応えていったのでは
ないかと思うのです。
同じように、『吸血姫(1971)』を発表した時、
ヒロインに川島芳子の扮装をさせたために、唐さんは右翼では
ないかと言われたのだそうです。そして、今度は自分から
『少女と右翼』を書いたりする。面白い応え方だな、と思います。
どちからといえば唐さんご本人の日常や行動様式は保守的で、
確かに面白いことへの追究には少年のように余念がないですが、
一方で、激しい猟奇性や極端な主義主張とは無縁であるように
自分には思われます。
が、この、ついつい皆さんの期待に応えてしまうところが、
唐さんという存在を大きくしたのだとも受け止めています。
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