12/27(金)『風のほこり』を観てきた

2024年12月27日 Posted in 中野note
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↑一緒に『風のほこり』を観に向かう車から椎野が撮影してくれました

今日はなかなかのハードスケジュールで、
朝6:00には家を出て小田原に行き、いくつか打ち合わせを経て、
ついでに混み合う蒲鉾店で買い物をして午後には横浜に戻り、
それから東京まで二往復しました。

なかなかの走行距離でしたが、そのなかで、
実に久しぶりに『風のほこり』を観ました。
2006年の初演依頼、新宿梁山泊が再演を重ねてきたものです。

唐十郎のお母さんの青春時代を題材にした物語です。
作家志望であった田口加代が浅草の軽演劇の文芸部員、
水守三郎に試作した台本を持ち込みながら、作家としての師弟関係や
恋愛感情が入り乱れる、という設定です。

唐さんが、自分の原点であるお母さんを題材に、
軽演劇や新派などさまざまな芸能が割拠した浅草のベル・エポックを
描き、それらが終焉、急速に殺伐としていく世相を打ち出した
金さんの演出により、何度も上演されてきました。

今回は、5月以来、企画されて、
大久保鷹さんのほかは新キャストにリニューアルしての上演でした。

秋に観た『ジャガーの眼』と並べて観ると、唐さんが金さんに何を
託してきたのかよりよくわかってきました。
『ジャガーの眼』は田口の、『風のほこり』は田口加代の、左目を
めぐる物語です。いわば、親子二代にわたる眼球譚です。

さらに、唐さんが幼い頃にお母さんから聴いた下町エピソードを
集めて作られた台本『吸血姫』を2000年に金さんが復活させたことを
考え合わせる時、ドクター弁で名を馳せた金さん、『吸血姫』を
新演出してくれた金さんに、唐さんがアンサーしたのが『風のほこり』
だったと、伝わってくる上演でした。

作家として大成できなかった田口加代さんは、捨てられていく
あこや貝になぞらえられ、とすると、その貝が生み出した真珠こそ
自分だ!と唐さんが自賛しているようで微笑ましくもありました。
一方で、お母さんあっての自分だよ、という謙虚さの証明でも
あります。

田口加代さんは、お父さんが買った梅毒病みの娼婦に、不思議な
母娘の関係を感じるという、実に不思議だけれども、感覚的には
納得できる設定も持っています。"作家"というものの業や恐ろしさを
感じさせる設定です。

新キャストの皆さんが好演してこれからの未来を感じさせており、
大久保さんの嬉々とした熱演に、観客だけではない誰に向けての上演
なのか、という想いを観ました。

唐十郎が自ら原点を描いた作品として、深く考えるべき台本だとも
感じ入りました。今回の上演に感謝!



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