12/30(月)『御注意あそばせ』本読みWS 第5回

2024年12月30日 Posted in 中野note
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↑2002年に閉店した文壇バー「火の子」の写真。文化人類学者の
山口昌男先生がいます

一昨日、12/28(土)は2024年内最後の本読みワークショップでした。
本来は日曜夜の開催ですが、12/29に私にイベントの仕事があったので
一日前倒して行わせてもらいました。

実は、その前に実際にスキヤキをやってみた。
その経過と結果は12/28のゼミログに書きました。
で、その勢いを駆ってワークショップを始めたのです。

取り上げたのは二幕です。
前回で二幕のさわりをやり、今回は中盤です。

その中でわかってくるのは、「文壇バー」の雰囲気です。
現在はそういうものがあるか、よくわからないのですが、
1980年代当時はもっと文壇・論壇が華やかで、作家・思想家・編集者
といった人たちが入り浸るバーが新宿界隈にあったのだそうです。
唐さんは芥川賞をとっていますから、そういう付き合いが多かった
でしょう。それを色濃く反映して、この「トロワバレ」というバーには
河出書房新社の編集者でもあった詩人の平出隆さん、双葉者の編集者・
仁村さんが出入りしているのです。

そこで唐さんは、平出さんの初期代表作である詩『花嫁』を遊ぶ
誦じ方をさせたり、二村さんにはプーシキン『スペードの女王』論を
語らせます。特に二村さんはパリ時代に佐川一政さんと語学学校の
友人だったという設定で、二村さん・佐川さんで『スペードの女王』
について語り合ったのを思い起こしながらお話しします。

その上で、「トロワバレ」のマダムである「奈美」さんの登場を
待ちます。この「奈美」さんの造形、後に始まる「僕」と「奈美」さん
のやり取りに、『スペードの女王』は影響するという進行です。

すなわち、奈美さんは、『スペードの女王』に出てくる老婆よろしく
銀のメッシュを髪に入れています。そして、トランプをあやつる。
トランプを使ったギャンブル「フェロー(ファラオン、ファロ)」を
展開し、やがてタロット占いへと至ります。

物語のキモは、この「奈美」さんを演じる女優は、一幕でシャワー室に
現れた「K.オハラ」と同じであるということです。1978年『ふたりの女』
1982年『秘密の花園』を応用して、唐さんは一人の女優に二役を
演じさせることで、主人公の「僕」を魅了し、翻弄するヒロインを
形成します。この構造がちょうど、アンドレ・ブルトンがパリで
発見した『ナジャ』と重なります。「K.オハラ」「奈美」は、唐十郎が
パリと東京で発見した「ナジャ」なのです。

物語に話を戻せば、「奈美」さんはパリでも「トロワバレ」という
バーをやっていた過去を持ち、そこに佐川君が来ていたという設定から
「僕」を占うタロットの世界へと入っていきます。

一幕で「オハラ」が傷つけたカカトはしっかりとブーツで覆われ、
「僕」にとって一幕の「オハラ」が、実際にいたのか、幻視だったのか
わざと曖昧にする仕掛けも愉しませます。

・・・というわけで年内はこれでおしまい。
来月は1/5(日)19(日)26(日)と三回開催し、『ご注意あそばせ』を
完結、2月からは『ジャガーの眼』に進みます。

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