7/29(火)『お化け煙突物語』本読みWS 第2回 その②
2025年7月29日 Posted in 中野note
↑実際の写真です。盲人三人は視力があった頃、それぞれの職場から
眺める本数の異なるお化け煙突に心慰められていた、という設定です
舞台は鉄道病院の病室、「本間玲子の姉」と「大塚の母」が入院する部屋。
「江ノ島カイ」「本間玲子」「大塚の息子」の珍妙な恋愛沙汰が続いて
コミカルな展開を見せたあと、「カイ」は「玲子」にのしかかります。
「姉」は「玲子」の下敷きになり、座布団3枚状態にある。
が、「カイ」の目的は「玲子」でなく、ベッド。
自分の育ての母が使った「ベッド」を捕らえ、その中から「蜘蛛の糸」
を取り出します。この「蜘蛛の糸」が、後のストーリーに続く伏線に
なります。
と、そこへ三人の盲人が登場します。
彼らの目的は、自分たちが盲人となった原因である「大塚の母」に
復讐すること。かつてメチル・アルコールを商っていた「ワシ」こと
「大塚の母」から件の商品を買ったために、三人は眼の光を
奪われました。ゆえにこの場に押しかけたのです。
ここで面白いのは、病室に入ってきた彼らが、なかなか本題を
切り出さないことです。「大塚の息子」は身構えている。
しかし、三人は恨みや復讐をストレートに表現しません。
まずは自分たちの経歴を語ります。それが、観客に三人の
キャラクターを説明しつつ、同時に「そういった自分たちを盲人に
した」相手への、遠回しであるからこそ強烈な嫌味になっている。
要するに、真綿で首を絞めるような陰湿さが三人の面白さなのです。
彼らのキャリアを整理すると。
「蝉丸」
都電の車掌。終点 三ノ輪駅にくると見えるお化け煙突をたのしみに
していた。
「とかげ丸」
彼も鉄道関係者。飯田橋駅の連結係。トロッコ、貨物車、
蒸気機関車で働いた経験がある。彼もお化け煙突のファン。
「蜂丸」
上野公園の「お猿の電車」で働いていた。猿の「タアちゃん」の
世話をしていたが、「タアちゃん」とお化け煙突に登った際、
メチル・アルコールに酩酊した結果、「タアちゃん」を煙突の中に
落として死なせてしまった。
という三人です。
それぞれに鉄道に関係して働き、お化け煙突に愛着し、
メチル・アルコールに人生を狂わされて盲人となった点が共通して
います。そして、そうして越し方を披瀝しながら、「大塚の母」への
復讐の助走をしていく、「大塚の息子」にジリジリと迫り、
プレッシャーを与えていくのです。
とはいえ、こうして書くとかなり暗く陰惨な感じもしますが、
これらが、どこかコミカルに、ブラックユーモアも含みながら
あくまでユーモラスに描かれるのが、この『お化け煙突物語』の
たのしさがあります。
次回は、ついに三人の盲人が「大塚の母」に復讐の牙を剥き、
青年主人公である「探偵」の登場に運びます。次は8/3(日)です。
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