8/6(火)力を借りた人々

2024年8月 6日 Posted in 中野note
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↑彼らを持ち運ぶときは顔にタオルや手ぬぐいをかけるべし。
丸山雄也くんが腹話術を習った先生を通じて、こうした作法も学びました


本来なら、今日は昨日の『煉夢術』レポートの続編の予定でしたが、
それは明日に繰り延べます。現在、23:31分。先週はじめの片付け以来
ハンディラボにやってきたところ、さまざまな思いが去来したからです。

今、1日の仕事を終えてここにいるのは、齋藤と津内口が
唐組からお借りした2体の腹話術人形をケアしてくれたからです。
「お返しする準備が整いましたよ」といういう連絡をくれたので、
一旦、自宅に持って帰ろうと、上の写真の2体を取りに来たわけです。

左はイトくんといいます。右はタカシくんといいます。
これは、お借りする時に唐組の久保井さんと藤井さん、福原さんに
教わりました。タカシくんはみんなに愛されて、『少女仮面』の
出演を重ねてきたベテランです。イトくんは、唐組の『ビニールの城』
で活躍してきた気鋭です。

はじめて2体を見た時、イトくんのビジュアルが気に入りました。
しかし、可動性の高いタカシくんにはやはりそれだけの実力があり、
唐組事務所で悩んだ自分は、2体お借りして良いかお願いをしました。
唐組の皆様は、それを快く受けてくださいました。

2体を眺めながら、どちらにも愛着が湧き、私たちの『少女仮面』には
2体とも出演してもらおうということになりました。タカシくんを
操る丸山雄也くんをイトくんに似せ、イトくんを操る赤松怜音さんを
タカシくんに似せました。4人で鏡合わせ。私たちの『少女仮面』には
もうひと組、鏡合わせの2人がいて、それは老婆と少女・貝です。

「鏡」がキーアイテムである『ジョン・シルバー』は唐ゼミ☆の原点であり、
その続編たる『続ジョン・シルバー』こそ『少女仮面』の原型である
というのが私の考えです。風呂・山の絵・水道とくれば、唐さんの頭の
中は「銭湯」でいっぱいに違いない。だから、唐ゼミ☆の『少女仮面』
には「鏡」が登場します。自分の工夫というより、この芝居は
潜在的に「鏡」を望んでいる。そう思うからです。

イトくんとタカシくんが来てくれたのは、唐組のご厚情による偶然です。
自分はあまり運命論者ではありませんが、懸命に考えていると、
巡り合わせが自分を運んでくれるような感覚に陥る時があります。

イトくんとタカシくんによって鏡合わせが補完された時にそれを
感じましたし、山手事情社の谷洋介さんが座組に加わった時にも
同じ感覚を覚えました。長身であることを除けば、谷さんの
ビジュアルはまさしく「甘粕大尉」だからです。

私たちの『少女仮面』では、春日野が最後に『時はゆくゆく』を
歌います。原点主義の私としては、思いつきながら怖れや抵抗が
ありました。

正直に言えば今も、「これで良いのだろうか」
「唐さんは許してくださるだろうか」という自問自答があります。
「あたしは、何でもないんだ!」という従来の締めのせりふのなかに
逆説的な希望を語る行き方があるのではないか、という問いを現在も
問い続ける日々です。

しかし、どう考えても、この主題歌は春日野八千代を騙る女にこそ
ふさわしいと自分には思われるのです。。
そう思ってサトウユウスケさんに発注したところ、素晴らしいアレンジ
がきました。このプランはユウスケさんの伴奏によって支えられたのです。

加えて、詩人の新井高子さんの依頼で椎野が雑誌「ミて!」に執筆した
文章も自分を動かしました。あの中には、私たちが『ジョン・シルバー』
を初めて上演した時のご褒美として唐さんが、『時はゆくゆく』を
歌ってくださったエピソードがあります。

歌うべきか・歌わざるべきか悩んでいるときに
あれを読み、これは歌うべきだと思うに至ったのです。

正直に言って、私は自分たちの『少女仮面』が上手くいったと
思っています。数限りなく上演されてきた台本ですから、
唐ゼミ☆が公演して邪道ではいけないし、かといって過去の踏襲する
安全パイも良くないと思ってきました。

それなりにプレッシャーもありましたが、いつも通り
「唐さんは何を考えただろう?」と思案し続けるうちに、
自然とあの上演に行きついたのです。
結果的に、自然体でやることができました。

それは、自分のアイディアがどうこういうよりも、
上記のようにたくさんの偶然に支えられ、座組内外の人々に補完されてきた
結果でもあります。ありがたいことだと思います。

これから上演する時には、終盤部分に施したい工夫や課題もすでにあります。
その時に、またイトくんとタカシくんの力も借りて上演したいと思います。
しばしのお別れですが、再会を期して。
唐組の皆様だけでなく、二人にも感謝します。ありがとう。

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