11/29(日)『吸血姫』ワークショップレポート(中野)

2021年11月29日 Posted in ワークショップ Posted in 中野WS『吸血姫』
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いつもアシスタントを務めている佐々木あかりが、
現在は劇団マグネットワールドさんに出演して全国を巡っています。
そこで、昨日のWSについては中野がレポートします。

昨晩は『吸血姫』初回でした。
準備の時点から胸が高鳴る大作、大傑作です。
作品のパワーに呼応してか、参加の皆さんも19名。
じわじわ増えて、ありがたいです。

各演目の初回には、唐さんが執筆や初演をした時に
社会や演劇界はどんな様子だったのか。唐さんご自身が何を考え、
当時の交友関係や文学作品からどんな影響を受けたのか。
そんな話をします。

昨日の序論をざっとまとめると、こんな具合です。

【「少女」と「愛」について】
・当時の唐さんが「少女」に注目したのは、澁澤龍彦さんの
奥さんだった矢川澄子さんの影響があるはず
・「日本って、国のかたちも性質も"少女"っぽいよね」と
中野は唐さんに言われたことがある。
・色々な人々に言い寄られ、時にかどわかされながら、
すべてを受け入れ、むしろ飲み込むように相手を覆い尽くしてしまう。
それが少女の恐ろしさ。
・当時の唐さんが日本における「Love」の概念について考え抜いた
ところ、「愛する」とは「お世話すること」という結論に達した。

【唐十郎作品のなかでの位置どり】
・『続ジョン・シルバー』を原型にした1969年の『少女仮面』が成功。
岸田國士戯曲賞をとる。しかし上演団体は早稲田小劇場という他劇団。
・同時に自身の状況劇場は『少女都市』を公演するも、有名な天井桟敷との
乱闘から、少ない公演日程が休演によりさらに減少。評価を得るに至らず。
・1970年『愛の乞食』。一旦「少女」から離れ『ジョン・シルバー』ものに
回帰。内容的に傑作だが、複数箇所での同時公演は興行的に失敗。
・満を持して「少女もの」の集大成『吸血姫』を完成。

【こんな作品に影響を受けた】
・映画『愛染かつら』。子持ちの未亡人看護婦が医師の青年と結ばれる。
・小説『少女地獄(夢野久作)』。嘘つき看護婦・姫草ユリ子が大活躍。

【時代背景】
・1964年東京五輪。1970年大阪万博により様変わりする日本列島。
・「都市論」が盛んに。


これらを踏まえ、本読みに入りました。「第一幕 お世話の都」。

冒頭、『愛染かつら』のヒロイン名から取られた
看護婦・高石かつえが、同僚のナース2人を率いて歌の練習をしている
ところから始まります。歌謡界にデビューしようと意気込む3人。
今日は病院長の知り合いでレコード会社のプロデューサーが
彼らを品定めにやってくるらしいのです。

しかし、稽古をストップさせた高石は、同僚にケチをつけます。
看護婦の一人は子持ちで、赤ん坊を背負っていたのです。
(このあたり『続ジョン・シルバー』ヤングホルモンズと一緒)

芸能界を生き抜くために、冷徹な態度を見せる高石。
罵られた看護婦が怒りを爆発させそうなところで、
看護婦の情夫である「中年男」が登場。赤ん坊を受け取ります。
彼が卑屈にへりくだり、高石に謝り通すところで、
業を煮やした看護婦たちは去ります。

すると「中年男」は態度を変え、とたんに高石を口説きにかかる。
それどころか、彼が言うには、高石と自分はすでに関係を
結んでおり、背中の子は高石の子だというのです。

言いがかりにも聞こえる中年男の発言ですが、
そのあまりの真剣さと剣幕に押された高石かつえは、
やがて自身の身の上が疑心暗鬼になるに至ります。

自らを求めるように泣く赤ん坊。
高石にとって悪夢のようなシーンが極まるところで、
『吸血姫』第一回のワークショップは終了。

参加してくださっている皆さん全員に少しずつ台本を読んでもらい、
背景や勘どころを伝えながら、要所を繰り返しつつ劇が進みます。
途中参加の方がいたら、劇全体の流れを簡単に伝えながら、
物語についてこられるようフォーローしますので、
興味のある方はぜひご参加ください。

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