1/25(火)WSレポート②〜『続ジョン・シルバー』『少女仮面』『吸血姫』(中野)

2022年1月25日 Posted in ワークショップ
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↑日本列島は身をくねらせた少女のようだ。
唐さんの日本少女論はここから始まります。

昨日に引き続き、日曜日に行ったワークショップ後半のレポートです。
「少女」をテーマに、最近取り組んだ作品を比較しながら論じました。

(2)少女たちの変遷
まず、ここ半年のワークショップで扱った作品を並べてみます。
『続ジョン・シルバー』『少女仮面』『吸血姫』。

この順で読んでいくと、
当時の唐さんがいかに「少女」に関心を持ち、
その象を練り上げていったのかがよくわかります。

日本列島は身をくねらせた少女のかたち。
少女は色々な男たちに言い寄られ、誘惑され、
時にいいようにされるが、結局はすべて飲み込んで、強かに生きる。
こんなイメージです。弱くもあり、強くもある。侮れない存在です。

順に作品を振り返ります。

『続ジョン・シルバー』では、
ヒロイン・小春は少女フレンドを抱えてシルバーとの関係を
夢見続けます。男女の関係であり続けたいために何度も堕胎する。
これも過剰な純粋さの表れ、そういう女性が小春です。

一方、少女・田口みのみは、ボーイのパワハラ・セクハラを
一身に浴びながら、やがて彼女から吹き出した不幸な過去や闇が
ボーイを圧倒しかける。その片鱗が見えたところで物語は終わります。
弱者が強者に反転するところまではいきませんが、しかし、
その兆しは見えます。

『続ジョン・シルバー』の設定や登場人物を巧みにスライドさせて
再生産された『少女仮面』に進むと、少女同士がぶつかり合い、
共食い状態に入ります。

少女・貝は駆け出しの女優志望。
他方、心は乙女のままの老婆。老婆にできることは貝への応援だけ。
彼女たちを春日野八千代の手先たるボーイ主任は痛ぶりますが、
やがて春日野自体は、何でもないただの冴えない初老の女だと知れる。
そのニセ春日野を追い込むのが、貝に代表される少女たちの視線。
熱っぽいがゆえに残酷。そういう設定です。

「あたしは何でもないんだ!」
この最後の春日野のせりふは苦い。断念して舞台を下りるか。
こう言いながらも、さらに舞台への執念をみせるのか。
やり方はあると思いますが、いずれにせよ突き抜けない。

が、この作品は評価されました。
『少女仮面』は岸田戯曲賞をとりますが、あくまで他所に書いたもの。
対抗して書いた『少女都市』は天井桟敷とのケンカが有名になり過ぎ
公演への評価はうやむや。翌年に『少女仮面』を紅テントで上演するも
初演を凌ぐほどではない。『吸血姫』成立には、そういう背景が
感じられます。自分の劇団で「少女もの」の決定版を!
そういう意志がみなぎっています。

高石かつえ、床屋の妻・ユリ子、海之ほおずき(実は、さと子)
の三人に託して少女性が描かれますが、なんといっても特筆すべきは、
男たちに蹂躙され、食い物にされ続けた彼女らが、ラストシーン、
さと子を先頭に大逆転していくダイナミズムがこの劇の魅力であることです。
吸血鬼たちに血を吸われ続けた少女がやがて、
吸血姫として吸血鬼らを従えるようになるまでを描いた物語と云える。

やっぱり少女は強かで侮れない。

堕胎、震災被害、近親相姦、父殺し、刃傷沙汰と、
残酷オンパレードの『吸血姫』ですが、最後は突き抜けた思い切り。
少女の大ジャンプを描き切ります。

そして、唐さんの書く台本は、
ヒロインを梃子に弱者必敗からの大逆転という必殺パターンに突入。
『二都物語』『ベンガルの虎』『唐版 風の又三郎』までもう少しです。

次回から、時間が変わって毎週日曜18:00-20:00の開催。
2/6(日)より、大作『下谷万年町物語』がスタートします。

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