4/17(月)『愛の乞食』本読みWS 第4回レポート(中野)

2023年4月17日 Posted in ワークショップ Posted in 中野WS『愛の乞食』
愛の乞食_126.jpg
↑満州、港町の酒場で金歯を山分けする男たちに対する
万寿シャゲ。2010年唐ゼミ☆公演より(写真:伏見行介)


前回の番外篇をはさんで『愛の乞食』本篇に帰ってきました。

『愛の乞食』以前の『巷談絵巻ジョン・シルバー』、
『ジョン・シルバー』『続ジョン・シルバー』をあたったおかげで、
風呂屋の番台にいたシルバーや恋女房の小春の話もしながら
『愛の乞食』の話ができるようになった。

すると、この作品が、復員したシルバーが戦地で
何をしていたのかを語る芝居だということもわかってきます。
『ジョン・シルバー』シリーズ全篇はシルバーに家出されて
しまった小春の物語ですが、シルバーからすれば、
家出するのにこんな事情が大陸であった、というわけです。

さて、昨晩の内容へ。
太平洋戦争敗戦後の満州の港が舞台です。
ここで、規律を失った日本人兵士たちのが強盗・殺人を
犯します。現地でできた恋人や妻を連れ帰ろうとする
兵士たちを騙し、女たちを殺して金歯を奪う悪漢たち。
これが尼蔵、馬田、大谷の過去の姿、つまり海賊という
わけです。彼らは、13人の女たちを襲って殺め、金歯を奪う。

その際に化けたのが一本足の憲兵です。
憲兵とは軍隊内の規律を司どる警察の役割です。
だから、尼蔵たち日本軍内に巣食うアウトローたちにとっては
疎ましい存在です。きっと何度も憲兵に悪行の現場を挙げられ
憲兵を恨んでいたことでしょう。中でも一本足の憲兵=
通称シルバーには煮湯を飲まされたに違いない。

そこで、シルバーを貶めるために尼蔵たちは一本足の
格好をして女たちを襲い、金品を得ると同時にシルバーの
悪評を振りまいた。そういうシーンが2回くりかえされます。

「二幕一場 満州の赤いリラ」として挿話的に入れられる
港のシーン、それから、チェ・チェ・チェ・オケラの経営する
酒場で尼蔵たちが互いに強奪した金歯を見せ合うシーンは
わかりやすく、観やすく、彼らの怖さ、悪さ、コミカルさが
同居する親しみやすい場面です。

そこへ、ヒロイン万寿シャゲが花売りに化けて復讐にやってくる。
彼女は同胞の女性たちが無惨に殺されたことに腹を立て、
また、自らも一本足の男に出会って一命を取り留めた
経験から、尼蔵たちから金歯を取り返そうとします。

が、いかんせん少女の細腕、海賊たちに返り討ちに
されようとしたところで、当の一本足の憲兵がやってきます。

その直前のシーン。万寿シャゲは一本足の憲兵と
遭遇した場面を回想しながら、彼が決して悪い男ではなく
むしろ彼女に優しく接していたことを思い起こします。

尼蔵たちに差し向かいになった土壇場で、
万寿シャゲは、悪さを働いていたのは一本足を騙った
尼蔵たちであり、本物の一本足である憲兵は正義の人で
あったことを理解します。

正義の味方シルバーの登場により、ここから乱戦!
というところでこの場はおしまいです。
次回、舞台は現代の東京に還ってきます。
あれから海賊たちはどうなったのか。

あと2週で『愛の乞食』もおしまいです。

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