5/16(月)『蛇姫様 わが心の奈蛇』本読みWS第3回レポート(中野)

2022年5月16日 Posted in ワークショップ Posted in 唐十郎戯曲を読む『蛇姫様 わが心の奈蛇』
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↑唐ゼミ☆2010年初夏『蛇姫様 わが心の奈蛇』より(撮影:伏見行介)
この場面を稽古した時のことは自分にとって特別に重要な体験でした。

昨日は『蛇姫様 わが心の奈蛇』本読みWSの第3回でした。

初回で、ヒロイン・あけびが登場。
2回目は、青年主人公の小林(コードネーム:山手線)が登場。
そして今回の主眼は、この二人がどのようにして協力関係を築くか。
小林には弟分として"タチション(※役名です!)"もおり、
正確にいうとこの3人がチームとなるのが昨日やった部分でした。

3人は新米スリです。

あけびは小倉から亡き母の日記を頼りに上京し、
薮野一家を訪ねようとしたところ、その日記を電車の中で盗られる。
それで、それを取り返そうとスリの権八一家に入りました。
蛇の道は蛇、という言葉を思い出すこの設定。
あけびはなかなかの知恵ものです。

他方、小林の動機は不明ですが、
タチションは山梨と長野の県境から来た山だしで、
手っ取り早く都会でブイブイ言わせるために山手線をショバに
置引きをやり、あけびの日記をかっぱらったのもタチション。

ゆえに古参の権八ににらまれ、タチションと小林はヤキを入れられる。
タチションはマムシに噛まれて毒に苦しみ、小林は指を詰められます。
唐さんの世界ですから遊びめいてはいますが、冷静に考えると
なかなかハードな懲罰です。

さすがにその懲罰の残酷さに心を痛めたあけびは権八一家に抵抗、
結果的に身ぐるみ剥がされ、三者三様に散々な状況になる。

そこで男気を発揮したのはヒロインあけびでした。
彼女は小林を励まし、さらに毒が自分の体に回るのも恐れず、
タチションの指から毒を吸い出す。

その姿に見惚れた小林の心が動きます。
身ぐるみ剥がされたあけびを気遣い、権八が落としていった
片袖なしの振袖をあけびにかけてやる。と、あけびの腕に妙なアザを
発見します。初めは見られるのを嫌がったあけびでしたが、
小林はそれを「光るウロコのようだ」と言って褒めます。

自分のコンプレックスをかえって褒められたあけびは励まされ、
思わず調子づいて「蛇姫様」を名乗る。
あけびの献身がきっかけとなり、唐十郎流の蛇姫様が誕生する、
この作品全体の核となるシーンでした。


個人的なことを言えば、今回あたったシーンは相当に思い出深い。
あれは唐ゼミ☆でこの劇の稽古に取り組んだ2010年の春、
この場面を椎野・土岐・重村の三人とつくっていた時に、
自分は「あ、唐さんの劇の作り方がわかった!」と思ったのです。

この場面は、タチションと彼のために身を呈して毒を抜くあけびに
お客さんの視線が向く。けれども、本当に見せるべきは、その姿に
惚れ込む小林の様子なのです。せりふが与えられていない彼をどう
見せるのか、試行錯誤しながら、私は自分の段階が次に進んだことを
実感しました。そして、今ではさらに上の段階があると思う。

そんなことを体験させてくれたので、この『蛇姫様 わが心の奈蛇』と
この場面は私にとって格別の思い入れがあります。


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