4/18(月)『下谷万年町物語』本読みWS第11回レポート(中野)

2022年4月19日 Posted in 中野WS『下谷万年町物語』

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↑お瓢のかき口説きはことごとく裏目に。別れ話のリアル。

唐ゼミ☆2010年秋公演『下谷万年町物語』(撮影:伏見行介)


2月以来つづけてきた『下谷万年町物語』WSの第11回です。


最後から2回目に当たるこの回は、

お市率いるオカマ軍団との対決をしのいだお瓢と洋一の間に、

哀しい亀裂が入るところを読みました。


まずは佳境に入ったお瓢との対決のさなか、

お市の脳裏には映画『大列車作戦』が去来します。

フランスの民衆を苦しめたナチスの将校と、

警視総監の帽子を戴くお瓢が重なり合うからです。


このあたり、一見すると悪役めいたお市たちオカマ軍団の

苦しみや侘しさ、将来に募る不安がかいま見えて、

この物語が正義と悪の二項対立でなく、結局は食い詰めた

者同士の哀しい小競り合いという構造が見えてきます。


また、オカマたちが今日のLGBT的存在とは違い、

仕事にあぶれてやむをえず春をひさぐ元軍人たちであることも、

彼らの様子からよくわかってくる。


洋一への拷問が始まり、六本指だった彼の手は血に染まります。

が、オカマたちを前に機転を効かせたお瓢は、敵方の弱点である

お不動様の少年から移動証明を奪い取り、洋一を伴って脱走、

サフラン座は危機を脱したかに見えます。


しかし、この時のお瓢の行き過ぎた挑発と注射器への固執は、

かえってお瓢から洋一の心を離れさせます。

オカマ軍団と親しく暮らした過去や、血気に流行るお瓢の反感、

元恋人であるSKDの田口洋一への嫉妬が、現在の洋一を苛む。

心を痛める文ちゃんの前で二人はすれ違い、洋一はその場を後に。


立ち上げ公演となるはずだった軽喜座との合同公演

『娼婦の森 改訂版』初日にたどり着くことなく、

サフラン座は分裂の危機を迎えます。


さらに悪いことに、

そこへやってきた白井にお瓢がすげなくしたことで、

白井の中に洋一への逆恨みが芽生えます。

お瓢、洋一、白井。文ちゃんの前でお互いに大切に思っている

者同士が決定的にすれ違う不幸が連続する今回のWSでした。


洋一への拷問や、主人公たちの信頼が瓦解する内容ですから、

どの参加者も真剣に本読みに没頭しましたが、

それだけに終わった後はどんよりとした空気が流れました。


ところどころギャグやコミカルなせりふもあって、

それらも存分に活かしましたが、やはり重くあるべき場面です。

これが報われるのは来週。


準備は整いました。次週、大団円です。


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