11/14(月)『ベンガルの虎』本読みWS 第5回レポート(中野)

2022年11月14日 Posted in 中野WS『ベンガルの虎』 Posted in 中野WS『ベンガルの虎』

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↑前回に紹介した写真と合わせると、赤テントの屋根と水辺の位置関係が

わかる。お客は明らかに管理しきれていない。1幕終わりで行李を池から

出さなければならないが、入れば病気や虫に襲われそうな池に入って

いたのだろう。過酷な演劇修行。



昨日は旅先のグラスゴーから本読みWSをやりました。

『ベンガルの虎』1幕終わりから2幕序盤。


主人公たちがボロボロの状態から今週はスタート。

カンナは頼みの夫・水島に別の家庭があることを知り、

悲嘆に暮れます。(すぐにニセモノと知れましたがカンナは気付かない)

カンナを見捨てて逃げていた銀次は、流しの左近・右近に

ヤキを入れられ、傷を負って地面に転がる始末。


カンナは家庭や仕事を取り戻すこと、

銀次は流しとしてこの街で大人の男になること、

二人はそれぞれの望みを諦め、錦糸町を去ろうとします。

すると、公衆便所の水洗を越えて、浮かび上がる行李。


カンナが望んだバッタンバンからの行李が、ここにきて届く。

不思議で、不気味で、水島がカンナを捨てたいまとなっては

送り主さえ謎めいた行李が現れたところで、1幕が終わります。


2幕の舞台は花月園競輪場。

"将軍"という予想屋の威勢の良い口上から幕を開けます。

が、よく見れば、この男は1幕に出てきたミシン売りの中年男。

人のことを「シスター」と呼ぶ癖からそれがすぐに分かります。


彼は持ち前の勢いで、オドオドと競輪の車券を買いに来た

銀次を罵ります。差別用語満載の悪口が立て板に水のように流れる。

現在とは隔世の感がありますが、せりふとして聞かせます。


その後、馬の骨父子商会の面々がビルマ僧に扮して現れます。

東南アジアで日本人兵士の遺骨を拾っていたら競輪場に出てしまった、

という強引な設定ですが、ギャンブルに負けてうなだれる人々を

戦地で亡くなった亡者に、賭けに外れ、地面を埋め尽くすように

散らばる車券の量と白さを白骨街道に散らばる遺骨に重なります。


見事なイメージの連鎖。唐さんは、こうして二つの場所を繋げました。

ビルマ僧たちが将軍を言い負かしてこの場面は終了。


次に現れた銀次とカンナは親し気です。

そして、男ならドンと賭けろとカンナは銀次をけしかける。

が、銀次が賭けようとする2ー3車券を売る窓口こそ、

お市が担当する売り場でした。


そこからは、売り場窓口の前に立ったカンナと、

カンナの腕を掴んで離さないお市とのコミカルな闘いが展開。

小さな売り場窓口を挟んで腕の引っ張り合い。

これは、より強行なカンナの勝利に終わります。


というのが今回、扱った内容です。

今回のシーンにはいくつも面白い箇所があり。


・唐さんが車券売り場のシステムを勘違いしていること。

→賭ける番号によって、券を買う窓口が決まっていると思ったらしい

・カンナと闘いながら吐かれるお市の名言

→"人間はみな、この位の穴から出てきたんじゃ"。何か深いせりふ。

・銀次を連れてお市に対抗するカンナの口八丁

→自分たちを安寿と厨子王になぞらえる


など、楽しく演じ、観られる場面の連続でした。


また、参加者からの指摘も受けましたが、

1幕から2幕へ移行する間に、カンナと銀次の

コンビネーションが抜群に上がっています。


二人は一緒に暮らし始めたのか。いずれにせよ、

このペアの受け答えの良いことが二幕を盛り上げます。


来週は引き続き、お市との絡みから。

3週ぶりにロンドンの家から、落ち着いた状態でやります。


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