12/19(月)『ベンガルの虎』本読みWS 第10回レポート(中野)
↑大切な存在が死に飲み込まれてしまわぬよう、人は時に紐を引っ張る
昨日の本読み。『ベンガルの虎』三幕中盤をやりました。
このシーンの主眼は夫の水島が洋行帰りの商社員として
改めてカンナを南洋に誘うというものです。
二幕で競輪選手として現れた時には曖昧なところもありましたが、
ここでは水島が、南洋=死の世界への案内人であることが
よりはっきりと分かるようにせりふが書かれています。
初めは銀次を頼りにして水島を警戒していたカンナも、
ことば巧みに彼女を口説く水島に押されて、
ついには南洋に行こうという気になってしまう。
が、いよいよカンナが水島に取り込まれようとすると、
銀次がこれを阻止する。という構図が繰り返されます。
この際、特に重要な働きをするのが次の二つの道具。
①カンナと銀次を繋いでいる紐→生の世界への命綱
②行李の門→くぐると死の世界が広がる
この価値基準で見ると、
何度か繰り返される紐が切れた、結ばれた
行李の門が壊された、という現象が単なる道具の操作を超えて
この劇のテーマを背負っていることがわかります。
また、男らしさを増した銀次が自ら月光仮面を名乗って
暴れ回るシーンは秀逸ですが、見逃せないのはその前段の彼のせりふ。
初対面の時に、自分は当てずっぽうにカンナを先生と呼んだのだと
銀次は告白します。
つまり、カンナが生存していることに対する唯一のアリバイ、
それが銀次の証言だったのですが、いよいよこれが崩れることに。
当初、劇がスタートした時にカンナが言っていた忍岡中学の
元家庭科教師という設定は、すべて作り話だったと明らかになる。
ただし、銀次がここでわざわざカンナにとって不利な証言を
したのは決して彼女を見放しているのでなく、
月光仮面として新たな関係性をカンナと結びたい!
そういう宣言としてとらえなければなりません。
ここは銀次役の工夫のしどころです。
覚醒した銀次VS馬の骨父子商会の面々+水島
という構図でアクションに突入し、この争いが混沌としたところで
ミシン売り→予想屋の将軍として活躍していた中年男が
ゲイ雑誌のエディター(編集者)として登場します。
次回はこのエディターの登場から。
12/25(日)のクリスマスを最後に『ベンガルの虎』最終回です。
同時に、私の渡英中の本読みもおしまい。
来月からは日本で再開します。
日時は毎週日曜日の19:30。
『ベンガルの虎』。新たに始まる『秘密の花園 初演版』。
こちらもよろしくお願いします。
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