11/7(月)『ベンガルの虎』本読みWS 第4回レポート(中野)
↑まだまだあるアサヒグラフの写真。沼とはつまりこういうこと
昨日は旅先からのオンラインWSでした。
到着した二日前にまずしたことは、zoomを起動してのWi-Fiの強さの確認です。
これはイケる。うちより強いくらいだ。そう思いました。
が、調子に乗って動画を見せたら、今度はPCがバグり始めた。
序盤で参加の皆さんをお待たせしてしまいました。
そんな中でも第4回。
1幕終盤に当たるこの回の眼目は以下の3点です。
①右近・左近の示す錦糸町の汚さ、青春の上昇志向
②俗物隊長の夫婦関係
③カンナと夫・水島の関係のあいまいさ
①右近・左近の示す錦糸町の汚さ、青春の上昇志向
この流しの兄弟は折に触れて登場するキャラクターです。
登場するたびに、錦糸町が汚いと言う。時に、そこかしこにある
水たまりを"沼"とも描写します。これは明らかに、東京の下町と
バングラデシュをつなげてしまおうという唐さんの仕掛けです。
沼・蝿・匂い・月によって、はるかに離れた二つの土地の
イメージを結びつけてしまう。
それから、二人はこういう汚らしい土地から一刻も早く
抜け出たいと思って流しをやっています。
ガンマンの英雄ビリーザ・キッドになりたい、というせりふは
こんな動機から発せられます。いわば、主人公の青年・銀次の
モデルケースであるともいえます。のし上がりたい青年たちが
凌ぎを削る青春群像を見せる。
②俗物隊長の夫婦関係
第3回目で、カンナの勤めるキャバレーのマネージャー相手に
息巻いていた俗物体調を思い出してください。
彼が自分がいかにサディスティックに多情な女房に当たっているか、
そのよろこびを自慢していたわけです。
が、実際はぜんぜん違う。
彼は妻に白痴女を選んでいます。
要するに、物乞いをしているような女性でないと心を安んじることが
できない、弱い男性なのです。しかし、世間や部下には虚勢を張っている。
妻は白痴ですから、飴をぶらさげて言い寄ってくる男がいれば
これを断りません。その度に俗物は心を痛めながら、彼女に辛くあたり、
そして抱きしめる。そうやってお互いに依存している。
後につかこうへいが得意とする男女関係の典型がここに
あらわれています。
昨日やったシーンでは、妻の浮気相手はテレビの中の俳優に
過ぎなかったと知れ、その白痴ぶりから、俗物をさらなる情けなさが
襲います。悪役のボスである俗物隊長にぐっと深みを与える
このシーンは誰がやっても面白い。
コンプライアンスに厳しい現代社会では許されぬ
家庭内暴力ですが、虚構の中ではこういった人間の在り方を
保存していたいものだと思います。
③カンナと夫・水島の関係のあいまいさ
この物語は、カンナが夫・水島に振り回されるところから
始まります。ハンコを送ったという。しかし、そのハンコは
手に入らない。すでに日本に帰ってきているともいう。
けれど、会うことができない。
それどころか、水島にはすでに別の女性との間に歴とした
家庭があって、子どもまでいる。というのが、今回のシーンでした。
しかし、実はこの家庭は馬の骨父子商会の面々が協力して
でっち上げた偽物で、水島は妻であるカンナを煙に撒こうと
している。カンナは、頼みにしていた夫にフラれてしまう。
そういう場面でした。
しかし、ここで二つのことが気に掛かります。
カンナを煙に巻いたあと、水島はカンナの定期券を拾い上げて
ひとりごちます。何か、想いを残しているようでもある。
さらに重要なのは、一応この物語はカンナの主観を
正しいものとして進んでいるものの、当のカンナ本人が
読者や観客にとって信ずるに足る存在かどうかが問題になってくる。
言わば、語り手が犯人であった最後に知れるミステリーのような
展開も想定できるよう『ベンガルの虎』は書かれています。
以上3点を経て、次週は1幕終わりから2幕へと移行していきます。
次週も旅先、グラスゴーのホテルから。
もう動画を見せるのはやめます!共有画面はシンプルに台本のみで!
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