2/21(火)『秘密の花園』本読みWS 第7回レポート その①(中野)
2023年2月21日 Posted in 中野WS『秘密の花園』
↑豊臣秀吉。一説には彼は6本指の持ち主だったらしい。本当だろうか?
片付けをするために翌月曜日に本読みWSを振り替えました。
平日にも関わらず参加してくださった皆さん、ありがとうございます。
それでは、第7回のレポート!
※昨日やったパートは内容がかなり入り乱れているので、
レポートも今日と明日の2回に分けます。
2幕の真ん中です。劇中に降る雨は異様に激しさを増し、
日暮里の坂の途中にあるアパートの2階が床上浸水するほどに。
そんなわけあるか!という設定ですが、
こけら落とし公演から劇場を水浸しにしたくて仕方ない唐さんの
気概と勢いが溢れています。
そしてそれは、"殿"が口にするせりふにも出てくる。
「その本多氏が、果して、こんなことに気づいたでしょうか。
柿(こけら)落としに於て、ここが、床上浸水に見舞われるなどと!」
・・・先日まで本多劇場でお世話になった私としては、
いまや下北沢を劇場街ならしめた初代本多さんへの唐さんなりエールを
感じて、胸の熱くなるせりふです。
そんな中で、アキヨシ×いちよのやり取りはひとつのピークに達します。
初演版の特徴である"赤ちゃん言葉"が炸裂。
いちよに再開したアキヨシは、
またも姉がからかっているのかと彼女を邪険にします。
実際に同じ女優が演じているのでそれも無理からぬことなのですが、
いちよと大貫はこのアキヨシの間違いを許さず、徹底的にアキヨシを
罵ります。そして、今度は一転、デレデレとした赤ちゃん言葉に突入。
いちよがかじかから渡された指輪を抜き取るために指先ごと切断した
事実を心配したアキヨシは医者へ行くよう説得しますが、
やがて不思議な儀式に発展します。
姉もろはのイニシャルが入った指輪をいちよの傷持つ指にはめることで、
その出血が"処女を失った時のよう"な体験に転じます。
これまでプラトニックできたアキヨシといちよが、
さらに強く結ばれる瞬間です。
加えて、この行動はもう一つの側面も帯びます。
怪我を負ったいちよの指がもろはの指輪を貫くことで、
今度は姉もろはが犯されるに至る。
この場合、いちよの指は男性、もろはの指輪が女性というわけです。
ひとつの事象がジェンダー的に真逆の状況を生み出す。
観る人、読む人の頭をグルグルとした混乱に引き摺り込む。
だからこそ、姉もろは×アキヨシ×いちよが交わって根源的に結びつきあう。
並の男女関係やセックスのレベルを超える、唐さんならでは展開です。
また、いちよの指が男性性を帯びる時、いちよは昔話『親指太郎』を
持ち出しますが、よく読むと一瞬だけ、怪我をした左手薬指と小指の間に
見えない指があり、それこそが真の自分だと言い出す箇所があります。
つまり、初演の前年に『下谷万年町物語(1981)』に出てくる"6本指"の
モチーフまでもが、チラリと『秘密の花園』をよぎる。
ただし、"6本指"の話題はすぐに畳まれて、二度と出てきまん。
唐さんが蛇足だと判断したのか、執筆時の無意識がひょっこり現れて
しまったものなのか、とにかく一瞬の"6本指"。
また、いちよとアキヨシが交わす会話の最後の部分は、
そのままエンディングへの伏線になっています。
いちよ 僕が去ったら。
アキヨシ 僕(いちよのこと)は去りますか?
いちよ 僕が、この地上を去ったら。
アキヨシ あたちも。
いちよ もしも、僕が、とわに去っても、あたちは、そこにぬかづくか。
アキヨシ あたちのまま。
いちよ 分かったな。これらが、指の言葉だぞ。
・・・要するに、いちよ自身は去る。けれども、アキヨシは後を追うな、
と、いちよは言います。そして、実際にその通りになる。
そこへ、いちよに指と指輪を残して去られた、かじかが登場し・・・
という具合に進みますが、続きはまた明日!
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