2/27(月)『秘密の花園』本読みWS 第8回レポート(中野)
2023年2月27日 Posted in 中野WS『秘密の花園』
↑もうすぐ小学生になる息子に自転車を買ってやろうと、近所の店に行きました。
自分が子どもの頃より平均して1万円は高くなっていました。考えものです。
両手を離して乗れるか。一度も足をつかず、一気に坂を駆け上がれるか。
そららが世界の大問題、という時間を息子が過ごす日も、近い。
なぜか唐さんは、そういう感覚を大人になっても維持しているから不思議です。
年明けから始めた『秘密の花園』本読みも、残すところあと2回。
来週、3/5(日)は初演版を最終回まで読み、
再来週3/13(月)は唐組が上演してきた改訂版との違いを比較します。
つまり、昨日は佳境も佳境。そのために盛り上がりました。
坂の途中にあるアパートの2階が床上浸水するほどの!?の大雨に見舞われ、
日暮里はいよいよ大変なことになっています。
(ということは、東京の東側は推して知るべし)
そこで、いちよをめぐるアキヨシとかじかは、激しく激突する。
まずは、かじかが叔父さんである"殿"とともに荒ぶります。
かじかが「生涯天中殺」であったこと。本人が何かを望むうちは
その希望は全く叶わず、その希望を諦めた瞬間に希望した以上の
大きさでその望みが叶ってしまうという特異体質が明らかになります。
結局は望外に望みが叶うので、かじかはラッキーマンな感じもするのが
「生涯天中殺」の面白いところです。
(ちなみに、「天中殺」というワードは1979年に大ブームを起こしたそうです。
書籍も大ヒット。『秘密の花園』初演の3年前)
そんな中、殿がかじかにSMショーよろしく鞭を振るう。
とってもコミカルなシーンが描かれます。
その盛り上がりの中で、かじかは畳の陥没により床下に消えます。
そして、そこに隠されていた菖蒲の葉、とりわけ特別な、
硫酸の池のほとりで育った「忘れ菖蒲」とともに床下から浮上します。
(畳の陥没→床下移動→別の場所から再浮上、という仕掛けは、
1981年2月に初演した『下家万年町物語』第2幕の影響)
そして、以前は自転車で登りきれなかった日暮里の坂を、
今度こそ踏破してみせると宣言する。しかも、いちよを自転車の後ろに乗せて。
坂道を自力で、一度も足をつかずに登り切れるかどうかが大問題!
という競い合いには、私たちが忘れてしまった小学校低学年的な主観が
強く息づいています。こういうのを切実に実感し続けているところが、
唐さんの特異な才能です。
かじかの台頭により、1幕で菖蒲を吹いたアキヨシ、
畳の床下から忘れ菖蒲を手に入れたかじかはともに
「夕泣き丸」として立ち、「夜泣き丸(=いちよ)」の応答を待つことになる。
二人の男からの挙手に対し、いちよはどちらに応えるのか。
結果、あっさりとアキヨシが勝ちます。いちよはアキヨシを選ぶ。
それもそのはず、かじか登場の前段で、例の赤ちゃん言葉のシーンにより、
二人はデレデレのドロドロになっていたわけです。彼らの結びつきは、
男女のジェンダーさえも入り変えながら強く、激しく混じり合っていたわけです。
ところが、いちよには不安がよぎる。
アキヨシは自分にぞっこんだが、それは本当に自分を好きなのではなく、
姉もろはへの想いが代わりに自分に向かっているだけなのではないか。
そういう心配に囚われます。そして、アキヨシを試しだす。
「ほんとうはお姉さんが好きなんでしょう?」と迫るいちよに
アキヨシは否定を続けますが、あまりに何度も繰り返すいちよを
「姉さん」と呼んだ瞬間に、いちよがブチギレる。
・・・というシーンで昨日は終わりました。
なんだか面倒なやり取りだとも思いますが、恋愛のよろこびとは
こういう面倒なやり取りを繰り返すところにあるとも言えます。
くっついたり、離れたり。相手を試したり、それでケンカしたり、
また愛情を確認して仲直りしたり・・・
いま付き合っている女性に「前の彼女のどんなところが良かったの?」
と、いかにしつこく訊かれても、男は決して元彼女を褒めてはいけない。
男女が逆でも然り。そういうトラップなのです。
じゃ、訊かなきゃいいじゃねえか!とも思いますが、
相手を試さずにはいられないのが恋愛なのでしょう。
昨日やったシーンの中で特に面白いのは、
いちよ役の中に、折に触れて姉もろは口調が混ざるところです。
瞬間的に「アキヨシ!」と呼びつけたり、姉独特の命令口調になる。
一人二役を活かし、目の前の女性が誰なのかわからなくなる不安と魔力。
観客にとっても、どちらを演じているのか、わざと分からなくする。
そういう仕掛けです。
来週、最後までいきます。次回は3/5(日)19:30から!
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