2/6(月)『秘密の花園』本読みWS 第5回レポート(中野)

2023年2月 6日 Posted in 中野WS『秘密の花園』
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↑そもそも"いちよ"の名のもとになったのは、この方ですね。樋口一葉。

昨日は『秘密の花園』本読みでした。参加者は15人。
二幕冒頭の約20ページを読みましたが、なんというか、
やはり何かを読んだり観たりすることは、自分の感性というか
バックグラウンドというか、人生を賭けて読むものだと痛感しました。

原因は、いよいよアキヨシのお姉さんが本格的に舞台に登場したからです。
・・・どういうことかは、後ほど。

1幕の終わり。
いちよはトイレで首を吊りました。
亡くなってしまったのか、命を取り留めたのか。
2幕冒頭ではまだわからないけれど、徐々にいちよが死んではないことが
明らかになります。

まずは、婚約を破棄したアキヨシを姉がなだめるシーンから。

アキヨシが離れようとしない日暮里のアパート、
すなわち大貫といちよの家のそばには、アキヨシの元婚約者が待っています。
いちよのお見舞いと称してわざわざ関西からやってきた彼女をアキヨシは拒絶。

せめて会ってはどうかと諭す姉に、アキヨシは聞く耳を持ちません。
それだけでなく、アキヨシは姉(「もろは」という名前)に不信を持っています。
不信のもとは指輪。アキヨシが元婚約者にプレゼントするための指輪を
買い与えていたのは姉、もろははそこに、自らのイニシャルを刻んでいました。

どうしてそんなことをしたのか問いただすアキヨシに、
姉は弟への過剰な愛情を語ります。曰く、母のもとで一人っ子だったアキヨシに
日暮里の坂の上から転がり落ちて姉となったのが自分である、という不思議な
話も。かなり不思議な話です。

親族関係が入り乱れた戦後であれば、他人の子を引き取ったのだ、とか。
娘を持つ父と、息子を持つ母が再婚して、血のつながらぬ姉と弟が誕生したのだ
とか、いろいろと考えられます。
それにしても、母親のいるアキヨシともろはの家に、父親の存在感が全く
感じられないのはなぜなのか。そんな疑問も渦巻きます。

ともかくも姉もろはは、アキヨシへの過剰な愛情を以って自らの恋愛も
放棄し、弟のことだけを考えて身を処して来たのだと熱弁を振います。

他方、いちよの夫である大貫は、千賀のお世話をしつつ、
アキヨシと問答します。何故いちよは自殺を図ったのか。
キルケゴールとかメーテルリンクとかを持ち出し、議論は難解ですが、
結局はまた、アキヨシに月々のサラリーを以って来て欲しいと誘導する始末。

再び、戻ってきた姉もろはとアキヨシは、より深長な話をします。
アキヨシがいちよを好きなのは、結局は姉もろはに対する憧憬なのではないか。
そういう疑いを、姉もろはは滔々とまくしたて、アキヨシに迫ります。

幼い頃からアキヨシが、姉の下着と自分の洗濯物をわざと一緒に洗おうとしたこと、
近所で犯した下着ドロボーの際、結局は姉の下着を嗅ぎつけてしまったこと、
いちよ(一葉)に惚れたのも、姉のもろは(双葉)と名前が似ているからではないか、
ということ。一人の女優が"いちよ"と"もろは"を演じ分ける仕掛けと相まって
姉が織りなすこの説は異様な迫力を帯びます。

また、それらの問答の隙間には、家事で赤ん坊を喪った千賀と、
アキヨシのやり取りが展開し、ニュアンスを添えます。
千賀はアキヨシに亡くした息子ジローの影を見ており、
ジローがせめて、『青い鳥』的な恋人と結ばれて欲しいという願いを込めて、
アキヨシといちよの仲を推します。今はかじかが新規オープンしたバーの
囲われ者となっているいちよを取り返せ!と、アキヨシをけしかける。

幼い子どもを喪った未熟な母・千賀のアキヨシへの願い、振る舞いは、
彼女の不幸や哀しみを湛えて迫るものがあります。

・・・という回でした。

で、冒頭に書いた人生云々ですが。

今回取り沙汰された、姉と弟の関係に、私(中野)は相当に抵抗があります。
私には実際に姉がおり、それがかなりあけっぴろげでガサツな姉であったために
姉や妹、女性の兄弟がいない唐さんはかなりの幻想を抱き過ぎているように思う
のです。この『秘密の花園』の魅力は、"姉"の魅力に負うところが大きいので、
そういったところが乗り切れない、ということを白状しながら読みました。

例えば、姉と自分の下着を一緒に洗濯するのが当たり前で育った自分に
とって、そこに幻想を抱く唐さんの欲求や夢見がちなところには、
かえって気持ち悪さを覚える、とか、そういうことです。

参加の皆さんの中には、異性の兄弟への幻想が強い人も弱い人もいて、
今回の場面はそういった話もしながら読み解きました。

その分、私は大貫や千賀びいきに読んでしまう。
でも、この台本の本質は、明らかに弟ー姉に幻想を抱けるかにかかっている。
そういう真情に共感するところを探す。これは私個人の目標です。

来週は、いちよが舞台に帰ってきます。
『オオカミだ!』の稽古中でもありますし、作品ふたつを頭の中で並走させて
オンライン本読みに臨みます。

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