4/9(金)ワークショップレポート(林)
4月になり、ワークショップでは『海の牙-黒髪海峡篇』が始まりました。
今月のアシスタントは、林が担当します。
どうぞよろしくお願いします!
この『海の牙-黒髪海峡篇』は1973年に状況劇場で初演された作品で
文芸誌「海」10月号に掲載された戯曲です。
初回ということもあって、まずは登場人物表をながめていきました。
中野さんがnoteで、この作品をやっていた時、ヒロインの名前が「瀬良皿子」だから、
リムスキー=コルサコフの『シェエラザード』を聞いていた、と書いていましたが
「シェエラザード」は『千夜一夜物語』の語り手であるお姫様の名前で、
そこから着想を得た交響曲がこれにあたります。
ということで少しだけ交響曲をみんなで聴いて、 WSはスタート!
冒頭は、とあるカツラ屋のシーン。
そして按摩の群が通り過ぎる場面ののち、
そのカツラ屋の前、ゴミ箱のかげにうずくまっていた女と男、立ち上がる。
(この女は「瀬良皿子」、男は「呉一郎」)
女は石を投げられて怪我をしており、男が「大丈夫ですか?」
と聞くところからこの二人の会話は始まります。
自分はパンマだからカツラ屋の前を通るといつも石を投げられる、と女は話します。
("パンマ"(娼婦)というのは、パンパンの按摩で、"パンマ"というそうです。)
石を投げられるにも関わらず彼女はその道を通るのですが、
その理由として女は「昼下りの坂」の話を始めます。
男 あんたにはそれが本当に見えるんですか?
女 見えるとも。ぐんと下ってビールびん色の。
ここをかけ降りてゆきたいといつも思うの。
愛する人と手に手をとって昼下りの坂をビュンビュン走ってゆきたいの。
このカツラやの前に立つといつもそう思います。
どうしてかしら。
きっと西陽がこのウインドウにさしこんで、
こんがり黒々のカツラがじとっと焼けて、
それがあたしの背中にはっついて、
「瀬良、さあ、かけ降りてごらんよ」とたきつけるから。
愛する人と走る坂は上り坂ではなく、下り坂。
...なにやら今後の二人の展開を予感させるような表現がちらほら。
その後、女はお客を待たせているといってその場を去ります。
会話の最後で男は、前からあなたを知っていると女に告げるのですが、
一体どんな目的で女へ接近したのか。。
そこへ一人の按摩が現れる。
この按摩、異様なずうずうしさがあって、男につかまらせてくれとお願いをします。
あれよあれよと按摩のペースで会話は進み、彼もまた「昼下りの坂」の話をします。
"昼下りの粒々"という言い方をするのですが、これは坂に差し込める西陽のことで、
「物の粒子を見たものはみな関係があるものです。」
と続けます。
つまり、私とあなたはもう関係があります。
ということを言っているのです。(これまた強引な距離の縮め方。。!)
このあたりのやりとりは『盲導犬』冒頭の、フーテンと破里夫の会話に似た感じがあります。
この按摩との会話が終わるところで今回のワークショップは終了。
今日の会話までで、この戯曲のテーマがたくさん出ている、と中野さんの気になる一言。
テーマと思われる表現や繰り返されている単語を自分なりに考えて、
今後どう物語と関わってくるのか気にしながら次回もワークショップに臨みたいと思います。
みなさま、次週もよろしくお願いします!
(唐ゼミ☆の『海の牙-黒髪海峡篇』のDVD。ずいぶん前にもらって観たのですが、またワークショップが終わった時に観たいと思います!)
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