5/9(火)『二都物語』本読みWS 第1回レポート その②(中野)

2023年5月 9日 Posted in 中野WS『二都物語』
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↑『二都物語』が始めて活字になったのは雑誌「文藝 1972年6月号」

肝心の『二都物語』冒頭をまとめます。
一昨日に読んだ内容としては、

怪しげな職業安定所がやってきます。
大久保鷹さんが机を背負って登場した有名なシーン。
課長、田口、佐々木、津、という4人により成り立っている
移動型のオフィス兼店舗です。
(あくまで職業安定所なのですが)

このあたりの唐さんの手つきは、
後年に書いた戯曲『河童』の中の動く不動産屋、
名付けて「運動産屋」に通じます。テント者の王者だけあり、
仮設性、移動性が大好き。

職業を探して訪ねてくるのは「犬殺し」です。
実際の本読みでは、この「犬殺し」という職業をめぐって盛り上がりました。
唐さんが子どもの頃には、リアカーを引いて巧みに野良犬を捉え、
食用として売り捌く達人がいたのです。

『ジョン・シルバー』に出てくる「小男」の父、
『腰巻お仙 義理人情いろはにほへと篇』の「ドクター袋小路」も
「犬殺し」という設定です。

WS 参加の皆さんとともに多様な食肉遍歴を披露し合いました。
犬、猫、鯨、鳩、ウサギ、カエル・・・。
世界にはさまざまな食肉文化があります。

そして、課長たちは犬殺しに「三味線屋」への転職を紹介する。
猫の皮でできた三味線。彼は犬殺しから猫殺しになった。
唐さん流のブラックジョークです。どこか哀切でもある。

やっと一人の職業を斡旋したところで、
この職業安定所はいかにも怪しさが漂ってきます。
職業を求めて必死な、いわばお客さんに対してどうにもぞんざい、
それどころか憎悪さえ感じさせます。いかにも訳アリな感じがします。

と、そこへ「陽向ボッコの群れ」がやってくる。
ちょっと不思議な、抽象的な登場人物たちです。
その頭目の男と課長は会話しますが、取り止めがありません。

ちなみに、この「陽向ぼっこ」というのは東北の伝承なのだそうです。
陽向を求める「ぼっこ=子どもたち」という意味で、彼らは暗闇でも
陽向を求めて畳の上にじっとしている。のどかな妖怪、そういう
イメージです。この平和さが後々この芝居に生きることになります。

唐さんは「陽向ボッコの群れ」に何を託したのか?

そこへ、正規の職業安定所職員がやってきます。
彼の登場によっていよいよ課長たちは偽物と知れる。
が、課長は得意の口八丁で彼を翻弄し、追い払います。

さらにやってきたコックさん。
彼は、この職安に紹介された娘の素行がひどいとクレームを付けに
きたのです。いよいよヒロインのリーランが登場。

という手前まで初回は読みました。
まだまだ序の口です。これからじっくりとどんな物語かを見極めよう。
それを狙うこのWSにとっては、ここまでは難しくない。
来週以降、リーランがいかに登場し、何を語るのか。
入り口から少しずつ奥へと進む段階です。

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