6/19(月)『二都物語』本読みWS 第7回レポート

2023年6月19日 Posted in 中野WS『二都物語』
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↑ケチャップの中に血に見る
バーの一角で現在と過去を行き来するリーラン


昨日の本読みWSのレポートです。
『二都物語』もあと2回、かなり佳境です。

まずは前週の悪夢さめやらぬリーランと内田の会話。
リーランはここが現代のバーであることを自覚しますが、
内田のトマトケチャップに、欠けたグラスの鋭利さに
つい過去の悪夢がよぎります。

どうしても、太平洋戦争末期に恋人を殺された景色が
よみがえってしまう。リーランの内面を知るよしもない
バーテンは、欠けているだけのグラスを叩き割る彼女の
過剰反応に激昂します。

他方、バー酒と薔薇の日々に
光子と暮らす少女5人が一気に押し寄せます。
聞けば、電柱に貼られた求人広告を見てやってきた彼女ら。

一気に包帯少女5人が面接にやってきた勢いに
バーテンはタジタジですが、ここがコミカルで面白いところです。
が、マスターが彼女らに対応すると、バーはあっという間に
万年筆工場に様変わりします。

リーランが訪れれば悪夢の朝鮮半島の村になり、
少女たちがやってくれば火事の惨劇を生んだ万年筆工場になる。
その意味で、ここは訪れる者を常に「暗い夢」に誘う酒場です。
リーランがカクテル「暗い夢」を飲んで、それが万年筆のインクで
できているというシーンは暗示的です。

こういった場面の変遷の中で、
リーランは全編を通して極めて重要なせりふを口にします。
曰く、かつての恋人を殺した憲兵たちを殺した、と。
その子どもたちは孤児となり、日本の戸籍を失って
韓国で成長し、今ではタクシー運転手をしている。
そういうせりふです。

ここには、噂の職安員たち、
すなわち、課長、田口、佐々木、津の正体が端的に表されています。
幽霊民族とは、日本人でありながら朝鮮半島より引き上げるチャンスを
失い、日本の戸籍を失った人々が故郷を求めて数十年ぶりに来日した
姿だったのです。彼らは血縁としては日本人でありながらも戸籍が
無いために、路上の万年筆売りというインチキ商売でしか
生活できません。このあたりの設定は、
必ず厳格に押さえておかなければなりません。

その上で、課長ら4人は内田一徹一家の偽者に扮して
内田家を乗っ取ろうとします。そうやって戸籍を手にいれることを
目論む。光子に変わり内田の妹たろうとするリーランの恋愛感情。
内田一家を装うことで故郷の戸籍を手に入れようとする
噂の職安員たち。目的は違えど、行動は酷似しています。

内田一徹の本物と偽物が対決し、
光子とリーランが対決する果てに『二都物語』がどう終結するのか。
次週が最終回です。

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