11/25(月)『少女都市からの呼び声』本読みWS 第6回(最終回)
2024年11月25日 Posted in 中野WS『少女都市からの呼び声』
↑2005.3に唐ゼミ☆で公演した時はテントなので屋台崩しアリ。
奥行きを使えました
その内容をここにレポートします。
第5回で読んだ、雪子と有沢のやり取りの続きから再開しました。
有沢は田口が元気であった頃から、田口の中にいる別人を
感じとっており、そのためにすんなりと雪子の存在を認めます。
雪子は有沢に迫り、その勢いはビンコを押しのけんばかり。
面白いのは、有沢が、物語の設定である秋にオススメの魚として
即座にワラサを挙げるところで、これは田口がフランケの世界で
雪子に言っていたことと符合します。
秋の魚といえば秋刀魚、冬は色々ある。
けれど、田口&有沢にとっては断然ワラサということでしょう。
このあたりに、彼らの親友関係に通じる気脈の太さを感じさせます。
ビンコが田口を危険視するのも頷けますし、雪子はこれで俄然、
勢いづきます。
とそこへ、田口の呻き声が聞こえる。
田口がこの世に還ってきそうな気配を感じた雪子が病室に入ると、
入れ替わりにビンコが病室前の廊下に戻り、有沢が誰かと一緒にいた
気配がする。ビンコはその鋭い感性で、異変と危険を感じとります。
病室に有沢とビンコが入ると、田口の腹の上に突っ伏した雪子が
います。ここで大事なのは、有沢には雪子の全身が見え、ビンコには
髪の毛だけしか見えないということです。
この世界で自分が生きるのだ、兄ではなく自分が。
そのために有沢と結ばれたいと願う雪子はビンコは対立します。
そして対立することで、ビンコにも雪子の存在がいや増しに
感じられるようになります。
と、ここで田口が起き出します。
田口が起きるということは雪子がこの世にいられなくなることを
意味します。実際に、目覚めた田口は雪子のことを覚えておらず、
自分にまとわりつく髪の毛(=雪子)を奇妙に感じるのみで、
黙殺してしまいます。
同時にビンコは、有沢が雪子の化身として拾ったビー玉を
ガラス瓶の中に封じ込め、雪子を封印します。
こうして、雪子も、雪子のいたフランケの世界にいた人々も、
忘れ去られていきます。少女都市からかすかに響く呼び声も、
やがてかき消され、忘却の彼方に追いやられます。
哀切な終幕。
病室のある現実世界と、フランケの世界、
此岸と彼岸の構造を実にわかりやすく展開した、ウェルメイドな
作品です。そして、初演の会場に稽古場や小劇場が想定されたことで
テント芝居終幕の屋台崩しもなく、その分だけ、静かに忘却に
沈む雪子が観客の心に訴えます。
・・・・。
これで、『煉夢術』『少女都市』『少女都市からの呼び声』と続けてきた
一連のシリーズが完結しました。「オテナの塔」を貴重とした連絡と
私は捉えています。
今後は、1984年に書かれた『少女都市からの呼び声』が翌年に
どう発展したかを探るために、『ご注意あそばせ』『ジャガーの眼』へと
つなげていきます。
特に『ご注意あそばせ』では、これまであまり触れてこなかった
小説家としての唐十郎にも迫り、唐さんに芥川賞をもたらした
『佐川君からの手紙』にも触れます。
併せて、年始には1/11(土)-13(祝月)の3日間をかけて、
集中講座的に『唐版 風の又三郎』第一幕に取り組みます。
どうぞご参加ください。
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