12/3(火)『御注意あそばせ』本読みWS 第1回 その②
2024年12月 3日 Posted in 中野WS『御注意あそばせ』
↑アンドレ・ブルトンの『ナジャ』が底流にあるのは明白!
これを機会にぜひ読んでもらいたい、唐さんの青春の書です
1983年に芥川賞を受賞して以降、唐さんと状況劇場の創作が変化せざる
を得なかったこと。例えば、ずっと恒例で続けてきた紅テント公演を
1983年の春はお休みしています。そういうことは、所属する劇団員に
とってはすごく大きなことだったろうと想像します。
特に、プリマたる李礼仙さんとの間に生じた関係の変化が想像できます。
1984年に改訂された『少女都市からの呼び声』、1985年に初演された
『ジャガーの眼』に李さんは関わっていません。
一方で、『少女都市からの呼び声』を1985年秋に若衆公演として
新宿で上演しているとの同時期に、『御注意あそばせ』は吉祥寺で
山崎哲さんの演出で上演されており、このヒロインを李さんが
演じています。劇団内の人間関係が混沌としていたことが想像できる。
一方で、1980年代半ばには、唐さんは第七病棟との仕事において
『ふたりの女』を再演し、『ビニールの城』を初演します。
作家として旺盛に創作を行ったともいえます。
そういう様子も、年表を追いながら皆さんと想像しました。
さて、『御注意あそばせの』の内容。
舞台は、アパートの一室から始まります。
ここは、病院前にあるオカマのキヨちゃんのアパート。
上手には坂があり、なんだか『秘密の花園(1982年初演)』に似ています。
主人公の「僕」は数日前からキヨちゃんと知り合い、
その部屋に潜り込んでいるという設定です。どうしたらそのような
関係性が急速に発展するのか、謎めいていますが、観客を惹きつけます。
※『下谷万年町物語(1981年初演)』の「お春」と「洋一」の関係に似ている。
そして、このアパートで何より謎めいているのは、風呂場を改造した
「シャワー室」があることです。普通、シャワー室を改造して風呂場に
することはあると思うのですが、この場合はその逆。なぜこんな設えなのかと
いえば、ここに、パリ取材中の唐さんが投宿したボナパルト・ホテルの
一角を再現しよう、という趣向だからです。
『佐川君からの手紙』では、ホテルにあったシャワー室が唐さんに
幻想を呼び込みます。キヨちゃんの部屋にそれを持ち込むと、
実際に「僕」は、ある女がここでシャワーを浴びるのを幻視します。
これが『御注意あそばせ』の始まり。
一方で、キヨちゃんとの会話になると、そういった小説的な幻想譚の
雰囲気は破壊され、キヨちゃんがオカマであることをめぐるやたら
具体的でコミカルな会話になるところが、いかにも芝居書きとしての
唐さんの真骨頂で、皆さん、安心するはずです。
オッパイを取り付ける手術が半分のみ進行中であることを「僕」に
指摘されたり、キヨちゃんは散々な言われようですが、それでも、
怒るどころか、自らを恥じて「僕」に謝り、「僕」に尽くすような
健気さでいっぱいのキヨちゃん。彼(彼女)のキャラクターで
この会話劇は華やぎます。
来週は、ヒロイン「K.オハラ」の登場です。
次回は12/9(月)19:30から!
トラックバック (0)
- トラックバックURL:
コメントする
(コメントを表示する際、コメントの承認が必要になることがあります。承認されるまではコメントは表示されません。その時はしばらくお待ちください。)