1/27(月)『御注意あそばせ』本読みWS 第8回(最終回)

2025年1月27日 Posted in 中野WS『御注意あそばせ』
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昨日は、先月12月から重ねてきた『御注意あそばせ』本読みの
最終回でした。昼間にはハンディラボで唐ゼミ☆稽古(といっても、
私と米澤のふたりだけによる稽古ですが)の公開日だったので、
中には、昼に直接会って、夜にはオンラインでお目にかかる、
という方々もいて、ありがたくご参加いただきました。

さて、『御注意あそばせ』。
前回、2幕に登場した「K.オハラ」に似た女「奈美」さんが
別れを切り出してくる場面を読みました。ずっと取り沙汰してきた
賭けトランプ「フェロー(ファラオン)」の賭け品に、「奈美」さんは
「あなた(主人公の「僕」)が私を忘れること」という条件を
つけたのです。

パリで出会った「オハラ」を求めて、新宿ゴールデン街のバー
「トロワバレ」に「奈美」さんを探し求めた「僕」にとって、
これはもっとも痛烈な賭けでした。「僕」が覚悟を決めてこの条件を
受けると、緊張感に満ちた勝負となり、やがて『スペードの女王』に
なぞらえた三番勝負の果てに「僕」が負けます。

負けて、これでもうお別れ、となると、「奈美」さんは「僕」に絆され
自らトレードマークのメッシュ(髪の毛のひとすじの染色)を隠して
「オハラ」のようにもなってくれ、お別れの儀式が始まります。
1幕で「僕」が「オハラ」から踵の皮を受け取ったように、
「奈美」さんもまた、踵の皮を僕にくれます。
(包丁で「奈美」さんの踵の皮をソリソリと剥くくだりがあります)
そして、お別れ。

原作である小説版『御注意あそばせ』よろしく、ここに「奈美」さんが
「お待たせ!」といって飛び込んできます。要するに、先ほどまで
「僕」とやりとりしていた「奈美」さんは全て幻視に過ぎず、実際の
「奈美」さんはここで初めて登場したというわけです。
パリ帰りのお客「大沢」と「奈美」さんの短い掛け合いは、
「僕」が過ごした幻視「奈美」さんとの余韻をぶち壊すに充分でした。
しかし、いざ「僕」が去ると、素知らぬ顔で登場した
現実の「奈美」さんは、ブーツを脱いで踵の傷を痛がってみせる。
つまり、やはりこの「奈美」さんは幻視「奈美」さんであり、
「オハラ」でもあるという再逆転で2幕は終わります。

エピローグ。
「キヨ」「看守」「竹子」の掛け合いが笑わせます。
「看守」は「竹子」と結婚したくて仕方なく、「竹子」の兄に
取り入ろうとします。が、ずっと目星を付けてきた「キヨ」は
「竹子」の兄でなく、自分が体よく「竹子」に拒まれてきたことが
はっきりし、「キヨ」に八つ当たりする「看守」。
2幕終盤の哀切があり、エピローグ冒頭は一転、笑わせるのが勘所
です。お客さんをホッとさせて、終幕に向けて準備させる。

このあたり、
「キヨ」に「竹子のお兄様」を期待して失敗する「看守」、
「奈美」に「オハラ」を期待して成功する「僕」、
という構造がキレイにまとまるように、この劇は構成されています。

再び、キヨのアパートに入ると、「僕」は密かに「奈美」の踵の皮を
握りしめて、1幕と同じようにすき焼きの準備をしています。
そこへ、買い物帰りの三人が合流。

和気あいあいと食事の準備をしている中で、「僕」にはやはりシャワー
が気になります。「オハラ」が現れやしないか、踵の皮を頼りに今も
期待している。

そこへ、アパートの「管理人」がやってきます。
聞けば「奥の扉とシャワー室を改装してもう一部屋つくる」と。
「すでに借り手は決まっている」とも。

新しい借り手として現れた女は、「奈美」のようでもあり、
自らメッシュを隠して「オハラ」を名乗りもします。

パリを舞台に始まった「僕」の、「オハラ」→「奈美」を求める道、
幻の女性への追求は完結せず、これからも続くという結末で
この劇は終幕します。『唐版 ナジャ』は都市のなかで続行されます。

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