3/25(火)『ジャガーの眼』本読みWS 第8回 その②

2025年3月25日 Posted in 中野WS『ジャガーの眼』
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↑この武器、使う方も危なさそうではあるが・・・

昨日の続きです。
「田口」と「少年ヤスヒロ」が煙を取り返す場面が終わると、
続いて、白いスーツ、つまりフィリップ・マーローの扮装をした「サラマンダ」が
現れ、「田口」にかえりみられることのない我が身を嘆きます。
嘆くも、人形ゆえに涙は出ない、そこがまた「サラマンダ」の悲哀です。
そしてうつむいて、研究室の隅に座り込む。

続けて、「しんいち」と「夏子」がやってきます。
彼らは寄りを戻したようです。「しんいち」は白スーツの後ろ姿を見て
「サラマンダ」を「くるみ」と思い込み、決別を切り出します。
が、「夏子」との既定路線生活に戻るかと思いきや、またも例の
青春の迷いが身をもたげ、「しんいち」はやはり「くるみ」に、青春の冒険に
惹かれてしまう。「夏子」も真横にいるわけですし、いい加減にしろよ、
と私などは思いますが、この優柔不断こそが多くの観客を魅了します。
人生とは、そんな風に迷ってばかりの人が多いということです。

ここで「しんいち」が唐突に取り出してくるのが、善福寺川で拾ったという
「グレイブ」です。「グレイブ」とはもともと、西洋式薙刀です。
要するに、棒の先に方刃の刃物がついているものだそです。

1983年に公開されたSFファンタジー・アドベンチャー映画
『銀河伝説クルール』に出てくる伝説の武器が、この「グレイブ」なのです。
※上の写真を見てください。
唐さんはこれに影響を受け、木の枝を十字にくくりつけた武器を
「しんいち」に授けます。ブーメランのように投げて使い、
結んだ紐によってヨーヨーのように手元に戻る仕掛けまで付いている。
これを「グレイブ」と呼んで「しんいち」はワイルドに振る舞います。

要するに、「しんいち」は「夏子」を捨てて「くるみ」との冒険に走る気
マンマンだったのです。そこへ、巨大牛乳ビンごと脱出に成功した
「くるみ」も合流し、いつもの我が儘「くるみ」が炸裂して、またも
「しんいち」と意気投合してしまいます。「夏子」が横にいるのに。

「夏子」はそっと姿を消します。かなり不吉な去り方ですが、
熱心に対話する「くるみ」と「しんいち」はその退場に気づきません。
それだけ、そっちのけなのです。

酷いと言えば酷すぎる。
この場面、「くるみ」と「しんいち」の会話には物語の集結に向けて
重要なモチーフが登場しますので、それままた明日に書きます。



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