1/19(月)『アリババ』本読みWS 第1回 その②

2026年1月19日 Posted in 中野WS『アリババ』
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↑本当は、初めて『アリババ』が掲載された三田文学 昭和42年6月号
(1967.6)を底本にしたいところですが、未入手。そこで、その次の掲載、
1970年1月刊行の『謎の引越少女』をもとに作った台本を取り上げています


いよいよ『アリババ』本篇に入っていきます。

冒頭、若い男女がいて、なぜか自らの足をひたすらに慈しむ男に面食らいます。
名前を「貧子(ひんこ)」「宿六(やどろく)」という、実にしみったれたキャラクター名
です。

が、ト書きをよく読むと、畳もくたびれ、食べかけのラーメンが残る貧しい
暮らし向きのなかに、真新しい蛍光灯や、桜の造花があって、若者たちが
望みを託した新生活であることを物語ります。
どうやら、若夫婦のお話である。そういうことがわかってきます。

劇が始まるとすぐに、「宿六」の語りが始まります。
雨の日に、馬のいななきが聞こえた「宿六」は、馬を追って東京都内を
駆け巡ります。アスファルトの上を裸足で走り、高速道路の上を裸足で走る。
しかも雨のなかを、びじょびじょに濡れながら走る。

劇は「宿六」主観で進行し、やがてその馬が、「貧子」さんとの間にできて、
生まれてくることのなかった子どもの存在をほのめかしていることがわかって
きます。ただし、「貧子」さんはあまりそれを、気にする様子がありません。

「宿六」は、世間が見る目も気にせず、それどころかそれを楽しむように
駈けていきますが、雨に打たれながら涙を流したりするのは、そういう
心象風景だからです。彼が駆り立てられていることが、だんだんわかって
きます。

他方、「貧子」さんは「宿六」を夜の営みに誘いかけたりもしますが、
「宿六」は馬が気になって仕方がない。というところで、謎めいた老人が
現れる。

昨晩はここまで読んで終わりました。

若き唐さんはわざと抽象的な書き方をしています。
けれど、堕ろしてしまった子どもが心に引っ掛かる、という景色は、
同棲生活を送る若者たちの生活として、かなり具体的な状況でも
あります。「アスファルト」「高速道路」「新幹線」が整備されていく
時代を背景に、唐さんが『アラビアンナイト』の有名な一節である
『アリ・ババと40人の盗賊』を絡めて、どう飛躍しようとしたのか、
そこを分けて考えれば、スッキリとした物語としてこの『アリババ』が
見えてきます。

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