7/10(月)『夜叉綺想』本読みWS 第2回レポート その①

2023年7月10日 Posted in 中野WS『夜叉綺想』
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↑復讐劇。眠らせた相手に飲ませようと体温計から水銀を取り出す場面
(撮影は伏見行介)

昨晩は『夜叉綺想』本読み2回目。
とても好きな台本、勝手知ったる台本なので調子良いです。

まず、昨日は全体を通じて、この物語の核となる部分を説明しました。
観客の立場からすればストーリーの進行上、
核心部分が明らかになるのはもう少し先です。
しかし、すでに撒かれているいくつもの伏線を読み解くために、
あえて先に説明しました。

『夜叉綺想』の前段はこんなお話です。

事の発端は、ロボトミー手術が生んだ不幸。
ロボトミー手術とは、精神や心の病気を治すために脳を外科手術する
という、現在では極めて危険視される手術のことです。
いま考えれば恐ろしいことですが、かつての最先端医療の中では
真剣に治療方法として取り沙汰された時代があったということです。
(『カッコーの巣の上で』という映画が有名ですね)

被害者は牛乃ゴーシュ。ヒロイン・京子の兄です。

長野県から上京した牛乃兄妹。
やがて都会の暮らしが悪影響したのか、兄のゴーシュは心を
病むようになりました。そこで妹の京子は医師に相談。
優秀な外科医である野口医師が執刀にあたり、京子は完治を
信じてゴーシュを送り出しました。夏の日のことです。

が、帰ってきたゴーシュは廃人となっていました。
チェロを取り出し、ひたすら『愛の讃歌』ばかりを弾くように
なってしまった兄ゴーシュ。
(哀しく、怖ろしく、コミカルでもある唐十郎独特の症例です)

京子はゴーシュをアパートの押し入れに隠します。
牢屋のように改造されたその空間で、ゴーシュはひたすらチェロを弾く。

かつての兄を失った京子は呆然とするばかりの日々を過ごし、
やがて復讐に目覚めます。彼女が考えた方法は、水銀体温計を割り、
取り出した水銀を毒として野口医師の家族に飲ませようというもの。
目には目を、兄を廃人にされたなら野口医師の弟を廃人に、
という発想のもとで、この物語の冒頭シーンが生まれました。

場末の映画館で野口弟に京子が声をかけたのは、
すべて彼女が思い描く復讐の始まりだったのです。

・・・今日も長くなったので、続きは明日。
上記を前提に、昨日に進行したシーンを追います。

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