7/12(水)『夜叉綺想』本読みWS 第2回レポート その②

2023年7月12日 Posted in 中野WS『夜叉綺想』
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↑唐ゼミ☆での上演時、雨の男たちにはミノを着せました
被差別民をあえてオーバーに描くことで、笑いに転化できないかと
考えたのです。次々と場面が変わる劇ゆえに、衣裳がセット、
ということでもありました(撮影は伏見行介)


第2回目に読んだシーン進行をおさらいします。

まず面白いのは、雨の男と土方たちが野口青年に絡みつくところ。
この「雨の男」という変わったキャラクター名は、
この男の往くところ常に雨が降る、という意味を表すものです。

『夜叉綺想』には被差別民の問題がテーマとして込められており、
島崎藤村が『破戒』のなかで取り上げた「新平民」を唐さん流に
表現したものが「雨の〜」という隠喩です。

ヒロイン・牛乃京子、その兄・牛乃ゴーシュ。
彼らを守るように取り巻く、雨の男が率いる土方軍団。
このメンバーはいずれも長野県からやってきた被差別民で、
それゆえに獣肉を食べたり、超自然的な力を備えている
という設定が施され、劇の全編を貫きます。

いまだはっきりとは表れていませんが、
そうして彼らは一致団結し、ゴーシュをロボトミー手術により
廃人にされたことへの復讐をチームとして果たそうと、
野口青年にさまざまな方法でアプローチしている、というわけです。

結果、雨の男たちの迫り方は、
嫌がる野口に強引に牛乃への差し入れを頼む、
差し入れは都こんぶ、というコミカルかつ不気味なもので、
重いテーマを扱ったからといってただ深刻にならず、
それを笑いに転化させる唐さんの面白さが溢れています。

雨の男たちが野口青年に迫ると、横ヤリが入ります。
警察に捕まった野口を迎えに来た義理の姉です。
この女性は、野口の兄、エリート外科医の野口医師の
フィアンセに当たるわけですが、この姉の野口青年に対する
迫り方が実にアヤシイ。メロドラマ的に不倫な匂いがして、
笑わせます。そして、雨の男たちそっちのけで、
二人は向こうに行ってしまう。

そこへフロックコートを着た野口医師が表れ、
自分のフィアンセと弟の関係を怪しみ、尾行していたことが知れます。
物語的に彼が悪の親玉なわけですが、その登場は実に滑稽です。

ところ変わって今度は牛乃京子。
京子がいかにして万引きで捕まった警察から解放されたか、
美容のためのお店で、お客のお肌の手入れやネイルを扱う美容部員
として働く京子が、いかに職場でいじめられているのかが
描かれます。

短いシーンですが、
田舎から上京してきた兄妹がいかに都会の壁にぶちあたっているか、
その辛さを描くシーンです。この辛さがゴーシュを心の病気に沈めた
原因かもしれない。この辛さが、京子を復讐に駆り立てた遠因かも
しれない。そんな風に受け取ることもできます。

皆のいじめを受けながら、ひとり都こんぶを噛み締めながら
兄を廃人にされた辛さ、そこから復讐の炎を燃やす心のうちを歌う京子、
という風にシーンは進行します。

さらに、京子の前に、
敵である野口医師の同僚、薬学を専門とするマニキュアの紳士が
現れます。この時はまだお互いの関係を知らず、美容にうるさい
個性派男性とお店のスタッフという出会いですが、この後、
二人は激闘を繰り広げる。その前段として、お互いのキャラ立ちが
発揮される愉しい伏線でした。

次回、1幕が進むごとに、野口青年をターゲットにした京子の復讐が
実行されていきます。また日曜に!
参加はコチラ→http://karazemi.com/perform/cat67/post-18.html

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