7/17(祝月)『夜叉綺想』本読みWS 第3回レポート

2023年7月17日 Posted in 中野WS『夜叉綺想』
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↑目まぐるしく変わる場面をセットで表現すると間に合わないので、
パックの女など入れて美容室の感じを出していた


昨晩もやりました。『夜叉綺想』の本読み3回目。
私たちの生活は連日の猛暑が続いていますが、
こういう寝苦しい気候こそ、この劇にはピッタリきます。
夢魔のような感じ。また、この芝居の1幕は唐さんの台本には珍しく、
次から次へと場面を変えていきます。

警察署の取調室→別の取調室→警察署の前の路地→美容室
→路地→美容室→アパートの一室

という具合です。こういう場所の変遷も、
なんだかヒロイン・牛乃京子の復讐に絡めとられてゆく野口青年の
悪夢のようで、不気味な雰囲気を漂わせるのに一役買っています。
上演を行う側はこの空間移動こそ工夫のしどころ。

昨日は野口と牛乃の距離が徐々に縮まり、
彼女のアパートに引き摺り込まれるまでを追いました。
普通の青年だったら女性に迫られるのに悪い気はしませんが、
生真面目一途な野口にとり、なにか不吉な予感がつきまとうように
台本は書かれています。

実際、昨日に読み解いた台本20ページ分のおよそ3分の2に
あたる14ページが、牛乃と野口の会話でした。
この頃の唐さんの長編には、1幕半ば過ぎに必ずこういう場面が
あります。主人公格の男女が腰を据えて対話し、それぞれの
出自がそのやり取りから見えてくると同時に二人の距離が縮まる。

初めは牛乃京子を警戒する野口が、徐々にその術中にはまってゆく
経過を読み解きながら体現することこそ、このシーンのコツです。
ともすれば延々とした会話に飽きてしまいそうなここを上手く
凌げば、劇はあと2時間以上、観客を引っ張ることができる。

基本的に色仕掛けで迫る牛乃に、躱そうと逃げ回る野口という
構図ですが、「ちくしょう!」という言葉で被差別部落出身の
京子の琴線に野口が触れてしまったり、京子のしつこさに
たまりかねて思わず激してしまった野口が、返ってその感情の昂りを
突破口にされてしまうところが、このシーンの妙味でした。

周辺には、ナンセンスなギャグシーンもあり、
馬の骨のオブジェを運んでくる運送アルバイトたちの会話、
チラリと登場するマニキュアの紳士が野口のストーカーと化して
いるところなど、笑わせます。

アルバイトたちは特に、『唐版 滝の白糸』の運送屋を思い出させたり
して、この時期の唐さんが意味の無い二人組を描くことにいかに
ハマっていたかもわかってきます。

ともかくも、牛乃のアパートに野口青年は引きずり込まれてしまう。
来週は1幕の最後、復讐はいよいよ具体的な動きを見せ、
廃人となった京子の兄・牛乃ゴーシュも登場します。

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