7/25(火)『夜叉綺想』本読みWS 第4回レポート その②

2023年7月25日 Posted in 中野WS『夜叉綺想』
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↑魔大医学部の研究室では夜な夜なパーティーが行われる
という設定の二幕が始まる(撮影:伏見行介)


一昨日に行った『夜叉綺想』本読みの第4回。
そこで読んだ2幕冒頭部分のおさらいをします。

ところ変わって、2幕は大学病院です。
主人公・野口の兄である野口博士の勤める大学病院は、
「悪魔」や「魔法」の「魔」に大学の「大」と書いて、
魔大医学部であることが分かります。

パッと見ると「慶應大学」ですが、
もちろんこれは唐さんがつくった架空の大学です。

その研究室で、今夜は謝肉祭が開かれ、
教授やインターンたちはみな、仮面をつけて呑み騒いでいる。
という設定です。特に、野口博士の妻ケイコが働く乱痴気騒ぎは
顕著で、夫を主役にしたパーティーの席上で、若いインターンたちの
エロいやり取りをして野口博士の嫉妬心を常に煽り続けるという
多情さを見せつけます。

同僚のマニキュア紳士はパーティーの進行役をやっているのですが
どうにもカオスな状況。

インターンたちに絡む妻の姿態を見ないようにしながら
スピーチを進める野口博士は何度も堪えきれずに話を中断。
それでもパーティーは進んでいきます。

ここで、重要な点を2点。

まず、このパーティーの最中、ずっと鳴っているとト書きに
指定されている『印度の虎狩り』という曲は、宮沢賢治が
『セロ弾きのゴーシュ』の中で書いた架空の曲です。

どうやらチェロの練習曲のようなのですが、
それがどんな曲なのかは誰にもわからない。それでいて、
何か雰囲気のあるタイトル。このへんが賢治の才能であり、
読者を惹きつけるところですが、唐さんはそれを援用して
ことも無げに書いている。

小説だったらこれで良いのですが、
舞台ではこの『印度の虎狩り』をかけなければならない。

また、場面の下敷きとして、
謝肉祭という設定で表されるように、ここでは15世紀末の
フィレンツェの雰囲気が濃厚に漂います。

それは、チェーザレやルクレツィア・ボルジアの時代であり、
レオナルド・ダ・ヴィンチの時代です。
科学と魔術と芸術が一体になったこのルネサンスの終わりの
雰囲気をたたえながら場面は進行します。

1幕では映像作品のように場面が次々と移り変わりましたが、
この2幕はここ魔大医学部の研究室に場面が固定、劇としても
ずっと見やすく、集中度が増す場面です。(上演する側にも易しい)

1幕終わりで水銀を飲まされた野口はどうなったのか、
そのことを気にしながら、喧騒・狂騒の2幕が始まりました。
続きは来週。7/30(日)です。

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