7/31(月)『夜叉綺想』本読みWS 第5回レポート

2023年7月31日 Posted in 中野WS『夜叉綺想』
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↑これが大学の研究室内とは思えぬ騒ぎっぷり(撮影:伏見行介)

昨晩の本読みは『夜叉綺想』5回目。
魔大医学部研究室のパーティーで浮かれ騒ぐ登場人物たち、
取り沙汰される会話の中から、昭和35年7月に牛乃ゴーシュが
前頭葉を手術されたことが明らかになりました。

そこに信州出身の一派がやってきます。
雨の男たち、それから仮面を付けて正体を隠した牛乃京子とゴーシュ。
唐さんははっきりとは書いていませんが、この一派が江戸時代の
被差別民である穢多・非人、明治以降に新平民と呼ばれた人たちなのは
明らかで、

・苗字に込められた「牛」の文字
・土方たちの行くところ常に雨が降る
・体温は37.2度と高め
・真っ黒な日焼け
・肉食。とりわけ内臓料理(もつ)を好む

という特性を、唐さんは面白おかしく描いています。

当然、これはなかなか危ない作業です。
タブーも、意味深長になりがちな設定も、笑いや軽妙さにまぶして
表現していく唐さんの挑戦です。

周到さ、用心深さと踏み込みの強さを感じます。
切り込まなければ作家では無い。
けれど、かわすところをかわさなければならない。

野口博士のスピーチの中からハッキリするのは、
人間の前頭葉が「待つ」機能を司っていることです。
だから、術後のゴーシュは「待つ」ことができなくなっている。
我慢しきれず目前の内臓料理(もつ)にかぶりつこうとします。

また、野口博士の妻ケイコが雨の男たちの一人である若い土方の
体に欲情するところも秀逸です。上流階級の婦人が若く鍛え上げられた
男の体を求める。それに対する博士の嫉妬。

また、象牙の塔たる大学病院がいかにハレンチかも描かれます。
どだい、研究室なのにパーティーを開いて乱痴気騒ぎしている。
教授の妻は若い男を漁っている。学長は女子インターンと学内で
性行為に及ぶ、など、やりたい放題です。

その騒ぎを縫って、楽師のふりをした牛乃兄妹がパーティーに潜入。
さらに、研究室の床下から、雨の男たちが野口弟を掘り出すシーンで
昨日は終了しました。
信州の一族による復讐がはっきりと姿を表す瞬間です。
それにしてもおそろしく手の込んだ、派手な口火の切り方。
(わざわざ野口を床下に埋めておくなど、だいぶ手間がかかっている。
それだけに劇的です)

1幕終わりで水銀を飲まされた野口弟がどうなってしまったのか、
次回に明らかになります。牛乃京子がはっきりと敵に対峙するスリル。
戦闘開始です!

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