7/3(月)『夜叉綺想』本読みWS 第1回レポート その①
2023年7月 3日 Posted in 中野WS『夜叉綺想』
↑『夜叉綺想』の単行本。1974.9.15刊行です。
日本の古本屋サイトだと手に入りやすい!
ここから7月・8月・9月と3か月かけて行う大長編の第1回です。
まずは、本読みに入る前に執筆時期を推理するところから。
初演年の1974年、唐さんは多忙です。
4月から6月まで『唐版 風の又三郎』を国内で上演します。
その後、7月上旬から8月2日までアラブ・パレスチナに遠征する。
ここでの上演はアラビア語で、テキストレジした特別バージョン、
凱旋公演として8月22日に1回だけこのバージョンを東京で
上演しています。
ちなみに、翌年に初演された『唐版 滝の白糸』は、
この7-8月のパレスチナ公演中に書いたものと睨んでいます。
根拠は、ずいぶん以前に行った『唐版 滝の白糸』WSで紹介しました。
そして肝心の『夜叉綺想』の執筆時期。
この単行本は、新潮社の「書下ろし新潮劇場」に収まっています。
新潮社が連続的に演劇の台本を出版していたシリーズで、
井上ひさし、安部公房、秋元松代といった作家も
このシリーズに書下ろしています。
唐さんは1973年の『ベンガルの虎』に続く2作目。
『夜叉綺想』単行本の奥付きには初版1974年9月15日、
印刷9月10日とあるので、色々考えると、『唐版 風の又三郎』を
公演していた1974年6月までに書いていたのではないかというのが、
私の想像です。
7月からはアラブ・パレスチナ渡航のための準備が
(もちろん特別バージョンの稽古も含む)
あったでしょうし、とにかく、出版も考えると、
4-6月のタイミングにしかハマらない感じです。
いずれにせよ、当時の唐さんの常軌を逸した才気走りの
なせる技であることは間違いありません。
『夜叉綺想』は思考や構成によって周到に書かれたというよりは
書き殴られた感じ、ほとばしりが魅力の台本です。
それは、『二都物語』の次に書かれた『鐵假面』、
『ベンガルの虎』の後の『海の牙 黒神海峡篇』に共通する
いわばB面の魅力です。暗くて、過剰で、どこに着地するのか
予測できない物語の魅力。スタンダードな名作とは違った
面白さを、これから3か月かけて追いかけたいところです。
昨日の内容については「その②」として、また明日!
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