8/28(月)『夜叉綺想』本読みWS 第9回レポート
2023年8月28日 Posted in 中野WS『夜叉綺想』
↑路地裏に立つ娼婦たちがギャンブルにはまり、薬物の匂いさえする
3幕は転落花横丁。かつての女医たちの零落ぶり。
2幕で魔大医学部で起きた殺人や不祥事はここまで皆の運命を
変えてしまった。
抜群の完成度を誇った2幕を経てあらゆる登場人物たちが転落し、
そこから主人公ふたりがいかに展望を見い出すかという旅の始まりです。
この3幕。
多くの読者や観客を呆然とさせ、
マニアックなフリークを狂喜させる唐十郎濃度の高い箇所ですが、
読み解くのはなかなか容易ではありません。
だからこそ燃えて、本読み自体は丁寧に、ゆっくり、
少しずつ押し上げるように皆さんと読み進めました。
まず、3幕冒頭。
これは2幕の1年後という設定です。
野口弟が義姉のケイコを誤って刺殺してから色々なことがありました。
まず、魔大医学部および野口博士の研究室は完全に解体されています。
野口博士は闇の匂いのする町医者として深夜の繁華街を往診して
回っています。博士のロボトミー手術痕を額に持つ女医たちは
皆が皆、新宿ゴールデン街に屯する娼婦に転落し、
そこで仲間同士の賭けポーカーをしてくすぶっています。
ケイコは死にましたが、女たちの中には不思議にケイコに似た女もいる。
野口弟はといえば、そんな娼婦たちを管理する用心棒になって
います。1・2幕の野口青年からは考えられない設定ですが、
彼はそうして糊口を凌ぎながら、明日に再び刑務所に収監される予定。
このあたり、法的なルールと設定の整合性が怪しいところですが、
そこはまあ唐さんのご愛嬌ということで。
強烈なのは牛乃兄妹です。
3幕が始まる少し前に、兄ゴーシュは亡くなりました。
マーケットに行った時にパジャマを万引きしたのを店員に
見咎められ、5階の屋上まで逃げた挙句に飛び降りてしまったと
妹の京子が語ります。このように哀れな死を唐さんが登場人物に
与えることは珍しく、その無惨さに打たれます。
身寄りのなくなった牛乃京子は生きる希望を失って
ゴーシュの愛用していたチェロ(作中では"セロ")のケースを
形見に背負いながら転落鼻横丁を彷徨っています。
ネオンに引っかかったパジャマにゴーシュの影を見ながら
街を往く牛乃と収監前夜の野口の再会までを昨日はあたりました。
二人がどんな風に改めて結びつき、この掃き溜めから飛び立とうと
するのか、それは来週です。
一発逆転のために唐さんが用意した奇想天外なアイディアに
期待してください。次回は9/3(日)!
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