9/18(祝月)『夜叉綺想』本読みWS 第12回レポート

2023年9月18日 Posted in 中野WS『夜叉綺想』
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↑マサカリを持った兄・博士(右)と牛乃をかばう野口弟(左)の対決!
(写真:伏見行介)


昨夜は『夜叉綺想』本読みの第12回。
次週が最終回であるために、最後のクライマックス、
そこからの大団円に至るための助走をつけた回でした。

2幕で起こった野口弟によるケイコの刺殺。
それに伴う魔大医学部の凋落。
前代未聞のスキャンダルに魔大医学部を追われた関係者は、
皆、牛乃京子を恨んでいます。

そこで、風に舞う兄ゴーシュのパジャマを忘れられない牛乃を
恨んで捕えるべく、紳士や学長は娼婦の格好をして
転落花横丁に紛れ込んでいる。彼らを率いるのは刑事。
刑事もまた、事件の真相を突き止めるべく牛乃を捕まえようとします。

面白いのは、刑事の中にも野口への過剰な思い入れが
ありそうなところです。この芝居の中で、とにかく野口弟は
モテまくる。

結果、大風が吹いたところで地上に落ちてきたパジャマを
巡り、牛乃+野口VS刑事+紳士+学長の闘いがはじまります。
そこに、ケイコに似た女・桂に絡んで揉めていた野口博士が
合流してくる。2幕に引き続き、この劇の根幹である兄弟の
対決が再燃します。

この『夜叉綺想』とは、要するに兄弟間の闘争です。

エリートの兄にコンプレックスを持っていた弟が無目的に
生きていたところ、牛乃京子によって事件に巻き込まれる。
その中で大学の医学部教授である兄の非道に気付き、
弟はアウトローに堕ちながらも兄と対決し、
兄を乗り越えようとする。そういう物語です。

そのような構造がはっきりする中で男として覚醒する
野口弟と牛乃がこの場からの闘争を試みると、
転落花横丁にたむろする女たちが脚を引っ張ります。

転落して娼婦に身を堕とした彼女たちは
牛乃が野口弟とともにこの底辺から脱出するを許さない。
そこで、鋲を撒き(忍者の撒くマキビシみたい)、
煎じた毒の液体を床にぶちまけることで罠をはります。

ここから、唐十郎作品のパターンである
3幕終盤の主人公たちへのリンチがはじまります。
来週、牛乃京子と野口弟はボコボコにされます。

その後、どのようにしてか二人が活路を見出すところから
エンディングに至る。この『夜叉綺想』もまた、
こういう唐十郎作品が得意とする進行をたどります。

牛野と野口が実際にどう追い詰められ、どう活路を
見出すのかは9/24(日)最終回にやります。

『夜叉綺想』特有の、強引すぎて謎に満ち、
だからこそ痛快なエンディングが私たちを待っています!

【来月以降の予告】
10月以降は『青頭巾』を取り上げることにしました。
10/1(日)8(日)15(日)24(火)29(日)と行います。
※10/22(日)はお休み→10/24(火)に振り替えます。

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